日本人は自動運転規制の塩梅の重要性を知らない 19世紀の「赤旗法」ごとく競争力を削がないために

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こういった痛ましい事故が起きるのはアメリカの自動運転に対する規制が緩いことが一因で、あくまで推定ではありますが、いわゆる運転支援機能を過信したドライバーが運転義務を放棄した状態で起きるような事故が起きています。だから日本では法律をもっと厳しくしたほうがいいという理屈はわかります。

私の実体験では、2代目レヴォーグの場合、運転者としての感覚的には高速道路でアダプティブクルーズコントロール機能とレーンキープ機能を使っているときの運転サポートは完璧に近く、ほとんど自分で運転している感覚がないままに長距離走行ができます。しかしレヴォーグはあくまで「レベル2」の認定になっています。

実際、渋滞時以外はハンドルから手を放すと警告音が鳴り響きます。それを無視していると速度が落ちて、最後は止まってしまう仕組みです。それに加えてレヴォーグにはドライバーモニタリングシステムというドライバーの顔向きや視線をつねに確認するカメラがあり、私が運転中によそ見をしたり居眠りを始めたりといった私の顔の表情の変化もきちんとチェックして警告します。渋滞走行中にスマートフォンの画面などを注視できるレベル3の仕様ではないのです。

安全性向上なのに性能を自主規制している?

一方でよく「自動運転は危険だ」という議論がありますが、わたしはこの意見は事実としては正しくないと思います。「人の命を守ることにこだわり、2030年に死亡事故ゼロを目指す」のがスバルのビジョンで、スバルの販売サイトでは運転支援技術を導入して以来、事故率がどれだけ減ったのかが数字で示されています。どの数字を見ても事故は運転支援技術群であるアイサイト搭載以前よりも大幅に減っています。

私が今回購入した2代目レヴォーグについては、ドライバーの立場としてはかなり安全になってきたと感じています。ただ、他メーカーも同じでそのように安全性が高まっているにもかかわらず、日本車全体で性能を自主規制しているような気がするのです。事故ゼロが確信できない限りはレベル3を申請する気持ちにならないというのは職人気質として共感できます。

ただそれとは別に業界全体の問題として、今回問題提起したいのは21世紀の赤旗法の話です。この先さらに進化する自動運転技術と、その先にいつか到達するであろう完全自動運転の時代に向けて、どのように法律をつくっていくことがいちばんなのでしょうか。

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