日本人は自動運転規制の塩梅の重要性を知らない 19世紀の「赤旗法」ごとく競争力を削がないために
2021年4月、ホンダから世界初の自動化レベル3技術を搭載した自動運転車「レジェンド」が販売されました。法人リース形式として限定100台のリリースです。レベル3とは簡単に言えば先述したように高速道路で渋滞時のような条件付きでの自動運転ができる車のことです。レジェンドの場合、フロントウインドー部分の光学式カメラ2台、レーダーとライダーがそれぞれ5台、計10台搭載され、HDマップなどとのセンサーフュージョン方式を用いています。冗長性も高められ、たとえひとつの監視装置が故障しても別の監視装置が作動する仕組みになっています。
そしてその次にあるのがレベル4で、これは人の介入なしに道路や走行条件を限定することで自動走行が行える状態を示します。国土交通省のロードマップ的には2025年を目指しています。一般道路を含めて条件をつけずに自動走行が行える完全なる自動システムがレベル5。以前は2020年代半ばには登場すると言われていたのですが、いまのところその登場はもう少し先だと考えらえているようです。
ロボタクシーが生活を一変させる可能性も
その時代、いわゆるロボタクシーの登場は生活者にとっては夢でもあります。特に、私の故郷がそうなのですが、限界集落というほどの過疎地ではないけれど、健常者でも駅や最寄りのコンビニまで徒歩で60分、バスは1日3本で、車がなければ生活もできないという山村では、集落全体が高齢化していく中でロボタクシーは生活を一変させる可能性がある重要技術です。
技術的に無人走行が可能になった時点で、それを法律で認めるのかどうか? そして誰がそれを決めるのか? というのは実は日本の未来の重要課題です。
それが最大多数の最大幸福につながればいいのですが、赤旗法の時代のイギリスでは少数の幸福のために自動車の可能性が犠牲になりました。歴史をひもとけば、自動車の普及を妨げる目的で、馬車の組合がイギリス議会に圧力をかけたというのが赤旗法成立の事情だったのです。馬車のほうが便利で実用的だという状況を作り出すのが立法の狙いで、実際、ロンドン市内では自動車をあざ笑うかのように馬車が速いスピードで追い抜いていくのが日常だったそうです。
ロボタクシーの出現に対しては、赤旗法当時と同じく、人命を守るためという目的での議論が建前になるでしょう。しかしそこにふたつ、それとは別の利害関係者が登場します。ひとつは職業運転手という集団、もうひとつは損害保険の業界です。もし法律がロボタクシーを認めると、このふたつの業界は壊滅します。
そもそも国土交通省のロードマップではレベル3以上の自動運転車が起こす事故については、システムに明らかな不備があることが証明された場合、その責任をドライバーではなく車が負うことを想定しています。実際、車体が自動運転の認定を受けるには万一レーダーが壊れた場合のバックアップ機能や、システムが外部からハッキングされないようなセキュリティー性能など安全性が二重三重にチェックされます。世界初のレベル3認定車であるホンダレジェンドの価格が1100万円だというのは、そういう理由も背景にあります。
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