「イスラエルvs.パレスチナ」こうも泥沼化した訳 ガザで繰り返される衝突に「真の出口」はあるか

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ロケット弾の大半は、ハマス軍事部門「カッサム部隊」が手製で製造しており、イスラエル・メディアによると、そのコストは短距離型で推定300〜800ドル。長距離型でその2〜3倍とみられている。

これに対し、イスラエル軍の防空迎撃システム「アイアン・ドーム」で使用される迎撃弾は1発5万〜10万ドルに達する。それでも、イスラエルでは無辜の人命を救え、物的被害を軽減できるとして、アイアン・ドームは「割に合う」との評価が定着している。

中東の衛星テレビ局アルジャジーラによると、ハマスは、イスラエルが以前にガザ地区に建設したユダヤ人入植地への導水管を地中から掘り出して、そのパイプを加工してロケット弾の管としてリサイクルしたり、ガザ沖の地中海で第1次世界大戦中に沈没したイギリス海軍の艦艇から不発弾をダイバーが引き揚げ、それをロケット弾の材料として再利用したりしている。このほか、建設資材などを流用してロケット弾製造の材料としているようだ。

ロケット弾を迎撃できないケースも

イスラエルとパレスチナの双方で人命に軽重はないはずだが、筆者が取材していた当時、イスラエル人1人が死ねば、パレスチナ側では約100人の犠牲が出ると言われていた。イスラエル側では19日までに12人が死亡したのに対し、パレスチナ側ではヨルダン川西岸も含めて237人が死亡している。

ハマスの関連拠点を狙うイスラエルの攻撃は、パレスチナ側で子どもや女性ら非戦闘員の犠牲者も多く出している。ハマスも無差別的にロケット弾を発射しており、そのテロ戦略はイスラエルの態度を硬化させるばかりだ。戦力差が明白なイスラエルに対するハマスの「非対称戦争」は、イスラエル社会を機能不全にしたり、国民を恐怖に陥れたりする効果を発揮している。

イスラエルは、防空迎撃システム「アイアン・ドーム」によってロケット弾の約90%を迎撃している。だが、ハマスは多連装発射システムを使い、数分の間に何十発も発射する技術を得ており、数的に迎撃弾が対応できない事態にも直面している。巨額の軍事費を投入するイスラエルに対し、物量作戦のハマスの軍事戦略も一定程度、効果を発揮しているのだ。

ハマスのロケット弾攻撃は、イスラエルの過剰な軍事力行使を招いてパレスチナ人の犠牲を拡大させている側面が強い。にもかかわらず、パレスチナ側でハマスへの反発や、厭戦気分が表面化することはほとんどない。

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