「イスラエルvs.パレスチナ」こうも泥沼化した訳 ガザで繰り返される衝突に「真の出口」はあるか
一方のハマスにも政治的な思惑がありそうだ。パレスチナでは5月22日に15年ぶりとなる評議会(議会)選挙が予定されていたが、アッバス・パレスチナ自治政府議長は、イスラエルが占領する東エルサレムのパレスチナ住民の投票を認めないことを理由に投票延期を決定。
ハマスが優勢との事前予測もあり、ハマスにとっては政治的な影響力拡大の好機になるはずだった。こうした動きを潰されたハマスは、ロケット弾攻撃を激化させることで、存在感を誇示したいとの見方がある。
イスラエル国内にもなぜ衝突波及?
衝突が大規模化し、イスラエル国内に住むパレスチナ人とイスラエル右派との衝突に発展したのは、エルサレムという両者の宗教心に触れる問題が発端となったことも大きい。
エルサレムの東部分は占領地であり、エルサレムを東西不可分の首都とするイスラエルの主張を国際社会は認めていない。だが、アメリカのトランプ前大統領は、こうした国際社会の慣行を破ってエルサレムへのアメリカ大使館移転を強行する露骨な親イスラエル姿勢を示した。
パレスチナ人たちが将来のパレスチナ国家の首都と望む東エルサレムでは、イスラエルによるユダヤ人化政策が静かに進んでいる。メディアで派手に取り上げられる軍事衝突とは異なり、ユダヤ人に有利な法律や裁判闘争によって、1948年以前にユダヤ人が居住していたなどの理不尽な理由によって、東エルサレムに住むパレスチナ人たちは家を追われている。
このように、真綿で首を締め付けるようなパレスチナ人に対するイスラエルの政策は、経済封鎖に苦しむガザやヨルダン川西岸、「2級国民」として雇用などで差別を受けるイスラエルに住むパレスチナ人も共有していた。ツイッターに象徴的なハッシュタッグが付けられ、若者たちが情報をシェアしたことも、衝突が各地に飛び火する要因となった。
アメリカの最先端兵器を供与されて中東最強の軍事力を有するイスラエルと、手製ロケット弾で応酬するハマスとの戦力差は明らかだ。それを象徴するのが、コスト比較である。
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