「客単価」を強引に上げるのが自殺行為と言える訳

次から次へとサービスを勧めてくる店の盲点

客単価を上げるために顧客が必要のないサービスを次から次へと勧める店が見落としていることとは(写真:PIXTA)
ちょっとした口コミによって、大きな影響を受けることがあるのが店舗ビジネスだ。年間4000人もの現役店長から相談を受け、これまでに延べ5万人以上の店長の悩みに応えてきた鳥越恒一氏は、最新刊『できる店長は、「これ」しかやらない』で、口コミの影響力の大きさを強調する。接客応対でお客様に「良い記憶」を残し、良い口コミを広げてもらうためには、どうすればいいのか?

強引に客単価を上げようとすることのリスク

昨今、客数減に苦しむお店が多く、売り上げを上げるために、少ないお客様に少しでも多くのお買い物をしていただこうと、客単価向上のための接客をするお店を多く見かけます。お客様にとっていい提案なら問題ないのですが、必要のない商品をお勧めしたり、お客様の想定予算を超える高額な提案を強引にしたりするお店もあります。

店員の接客に押し切られたお客様にはご購入いただけますが、その後、どうでしょうか?そのお客様は、またそのお店に行くでしょうか?おそらく、多くのお客様は、もうそのお店を利用しないでしょう。そうすると、一時的な客単価は上がりますが、LTV(顧客生涯価値)を考えると、未来の大きな利益を失ってしまいます。

私自身、さまざまな提案をされた経験があります。近所のガソリンスタンドで、給油以外のことを頼むと、必ず高額の提案をされました。冬前にスタッドレスタイヤの組み替えを依頼すると、必ず「新品のタイヤにしたほうが安全です。今なら安くできます」と言ってきます。

それを断ると、「バッテリーが弱っているので交換したほうがいいですよ」。それも断ると、「オイルも点検しましたが、オイルエレメントの交換をしたほうがいいですよ」。これも断ると、ブレーキオイルだの何だのと、本当に次から次へと提案が出てくるのです。「危険です」「安全のために」などと、相手が少し怖がるようなキーワードで提案するので、私も心配になって何度か提案を受け入れたことがあります。

ところが、いつも見てもらっている整備工場に定期点検に出すと、「やらなくていいこと、たくさんやっていますね!」と指摘されました。近所のそのガソリンスタンドには、二度と行かないようになりました。

口コミがLTVに影響を与えることは、珍しいことではありません。先ほどのガソリンスタンドの事例では、そのガソリンスタンドにはもう行かないので、私のLTVがこれ以上伸びることはありません。それどころか、家族や友人、近所の人たちとの雑談で、そのガソリンスタンドの話になったときは絶対にお勧めしません。

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