胃を切除した人の「退院後の食事」で大事なこと 恐れすぎず焦らず「階段状に」食事量を増やそう

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入院中はやわらかく調理した、消化のよいものを食べています。退院後も入院中と同程度に消化のよいものから始めましょう。

消化がよいものとは、その食物の分解・吸収にかかる時間が短いということで、胃での滞留時間を見ると、おかゆなどが1時間半程度なのに対し、普通のごはんは2時間半、ゆで卵は3時間半、天ぷらだと4~5時間というのが消化にかかる時間のおよその目安です。

基本的に、たんぱく質は炭水化物の2倍、脂質はさらに長い間、胃に滞留し、消化に時間がかかります。つまり、それだけ消化が悪いということです。もちろん、その食品を食べた分量や食べ方、調理法によっても消化に要する時間は変わります。

例えば、牛乳は消化のよい「おすすめの食品」に分類されており、75㎖では胃での滞留時間が1時間少々ですが、200㎖では2時間、400㎖では2時間半もかかります。同じく、おすすめの食品であるバターも大さじ5杯(75㎖、60g)では12時間を要します。

卵もおすすめの食品ですが、半熟、生卵、固ゆで卵の順に消化時間が長くなり、卵焼き100g分では3時間前後、必要になります。いくら消化のよい食品であってもたくさん食べれば消化に時間がかかり、消化器の負担が増すのは当然です。

また、おすすめの食物であっても、ろくに噛まず、大量に食べれば消化不良を起こします。例えば、いくら消化がよいといってもとうふ1丁を一気食いすればダンピング症状が起きたり、消化不良の症状が出たりするでしょう。逆に「気をつけるべき食品」のごぼうでも、少量を口に入れて、ゆっくりよく噛めば、さほど問題があるわけではありません。

基本はよく噛んで、少しずつ

胃がんの手術後の食べ始めは、どの術式の場合も「ゆっくり、よく噛んで」「少しずつ」食べることが基本です。

よく噛むといっても、30回とか100回などというのはひとつの目安で、要は口に入れた食物をよく噛み、休みながら飲み込み、ゆっくりと送り出せばいいわけです。

それによって、

・胃で食物がドロドロに溶けるのを助けるべく、噛んで細かくすりつぶす。
・胃で胃液とまぜ合わせるように、口の中で唾液という消化液と食物を十分にまぜ合わせる。
・刺激となる熱いものや冷たいものを、噛みながら人肌程度に温度調整する。
・噛むこと・飲み込むことに時間をかけて、腸に食物が流れ込むスピードを調節する。
・よく噛むことで満腹感が得られ、ついつい食べ過ぎるのを防ぐ。
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などといった効果が期待できます。つまり、口でよく噛むことによって胃で行っていた消化機能をカバーし、腸をはじめとした消化器への負担を減らそうということです。よく噛むことには、前述のようなたくさんの効果があり、特に手術で消化機能の一部を失った後は十分噛んで食べることがとても重要だということを、理解しておきましょう。

少しずつ食べるためには、一度の食事量を減らして分割食にします。1日の食事回数を最初は2~3回増やして5~6回にします。1回1回がしっかりした食事でなくてもかまいませんが、炭水化物の多い食品に偏らず、少量でもたんぱく質や、ビタミン・ミネラルなども含まれているメニューになるように心がけてください。

主婦の友社

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1916年(大正5年)創業。「関心・親切・安心・丁寧」。健康、美容、料理、暮らし、育児、ファッションなど実用ジャンルを中心とした雑誌・書籍・ムックの発行、ウェブメディアの展開、コンテンツ販売及び関連事業企画などを行う出版社。

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