「週休3日制」の当面の経済効果を計測してみた 消費意欲の増加と所得減少の効果の綱引きに

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次に、②所得の減少による消費縮小の効果を検討する。

週休2日制から週休3日制への移行では、休日・余暇時間の増加の裏で労働日数(時間)の減少が起きることにより、所得が減少してしまうことが懸念される。実際、「週休3~4日制」導入を決定したみずほフィナンシャルグループでは、基本給は週休3日制の場合で従来の8割程度、週休4日制では6割程度の水準に減少するという。

しかし、実質的な週休3日制を導入したリクルートでは、年間の休日数を15日増の145日(週休2.8日=約3日)としながら、一日あたりの所定内労働時間を0.5時間延長することで、年間の所定内労働時間と給与水準は変えないとしている。ただし、平日の所定内労働時間を増やすと、所定外労働時間を減少させてしまう可能性がある。

特に、一定の残業が常態化しており「あまり定時を気にしていない人」には影響が生じやすい。例えば、定時の終業時刻が17時でも19時までの残業が常態化している人は定時が17時半となっても19時退社の習慣を変えない可能性が高い。そうすると、日々の所定外労働は従来の2時間から1.5時間に縮まる。つまり、1日の「仕事時間」を「所定内+所定外労働時間」ではなく、「総労働時間」で捉えている場合、所定内労働時間の増加は所定外労働時間の減少をもたらし、その結果、所定外給与が減少する 。

ここで、毎月勤労統計 を用いて休日数と労働時間が変化した場合の給与総額に与える影響を確認したい。「週休3日制」によって①休日の増加分だけ所定内給与が減少するケース(みずほFGのようなルール)、②休日が増える代わりに労働日の所定内労働時間が増える結果、残業時間は減るケース(リクルートのようなルール)を考える。

休日が1日増えると月5.1万円の所得減に

試算してみると、①のケースでは所定内給与が減ることにより、給与総額は2019年対比で22.0%の減少となる。②の場合は所定外給与が大きく圧縮される(2019年のデータでは、所定外給与がゼロになる)ことにより給与総額は2019年対比8.0%の減少になる。

試算結果より、週休が1日増加すると所得が1カ月あたり15.0%の減少になる(①と②の平均値)と想定すると、1カ月あたりの労働所得の減少額は約5.1万円となる。労働所得と可処分所得の減少額が同額とすると、週休が1日増加することにより可処分所得は月5.1万円減少することになる。

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