マンションは「ハード」でなく「ハート」で守れ 有志のマンション理事たちが叫ぶ"災害への備え"

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勉強会の後半はワークショップが開催された

勉強会の第2部は、90名の参加者が12のグループにわかれて、防災に関するそれぞれの意見を交換した。「どのようなことを実施しているところが、防災力の高いマンションと言えるのか」というテーマには、各テーブルからさまざまな意見が出た。

「管理組合に頼らない、自己防災の意識が高い」「水も食料も備蓄していない(数十トンもの水を常備しなければいけないのは、負担があまりにも大きい)」「防災マニュアルがわかりやすい」「曜日別のリーダーが決まっている」「防災委員会などの組織が整っている」など、それぞれが重要視している項目が上げられた。

防災に関する悩みも続出。「住民の防災意識を高めるにはどうすればよいか」「行政との連絡をどうすればよいか。どこに、どのように相談にいけばよいのか」「規模が小さいマンションは、どのような対策を行えばよいのか」など、理事として防災対策の苦悩が寄せられた。

マンションによって事情は異なる

勉強会を終えて、出席者の1人は「マンションは固有の事情が全然違う。海に囲まれた立地、川沿いの立地、あるいは高層、低層など。階段の数や廊下の構想までまったく違う。ほかのマンションの事例を、どうやって自分たちの防災対策として取り込んでいけるのかを考えなければいけない」と、防災対策の難しさをあらためて認識したようだ。

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100人近い参加者が3時間以上にわたって熱い議論を繰り広げた

別の出席者は「うちのマンションは、今日紹介があった事例ほどには進んでいない。これまでの理事が防災対策に深い関心がなかったのかもしれない。危機意識を感じる」と、継続して取り組むことの重要性を語った。

東日本大震災以降、防災に対する意識が高まっていることは間違いない。が、さまざまな課題に直面し、震災時の現実に即した対策にまで昇華できていないことも事実だろう。

その一方で、話を聞いた全員に共通していたのは、日ごろのコミュニケーションの必要性を訴える声だ。「そもそも、すれ違った人と挨拶もできないような住民がいるマンションは、震災時に混乱するのではないか」と説く出席者もいた。

これまでマンションの防災といえば、ハード(免震装置や非常用発電機など)とソフト(防災マニュアルなど)に議論が集中していた。だが、真に必要なのはハート(住民同士の意思疎通)なのではないか。そんな考えを持つに至った、今回の勉強会であった。

 

東洋経済では、マンション管理(特に防災関連)についてのご意見、お悩み、各種の情報を募集しております。こちらまでお寄せください。

 

梅咲 恵司 東洋経済 記者

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うめさき けいじ / Keiji Umesaki

ゼネコン・建設業界を担当。過去に小売り、不動産、精密業界などを担当。『週刊東洋経済』臨時増刊号「名古屋臨増2017年版」編集長。著書に『百貨店・デパート興亡史』(イースト・プレス)。

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