経済活動再開も米公共交通機関の通勤利用戻らず 1940年以来最も重大なオフィス文化の転換進む
バイデン米大統領が掲げる2兆3000億ドル(約252兆円)のインフラ投資計画で公共交通機関に何十億ドルの支出が見込まれるものの、通勤列車やバスの運行会社は在宅勤務の急拡大で新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)後数年にわたって収入が低迷する恐れがあると懸念している。
米国勢調査によると、ホワイトカラーの米国人が就業日に自宅にとどまりビデオ会議漬けになる前には、大都市圏の労働者の約12%が交通機関を利用する通勤者だった。米国では新型コロナワクチンが1日平均220万回接種され、主要都市で経済活動が再開されつつあるものの、米公共交通協会によれば、全米では乗客は45%しか戻っていない。
交通機関の運行はコストを賄えるだけの乗客を列車やバスに満たせる力が頼みの綱だが、差し当たりは305億ドルの連邦支援がニュージャージー・トランジットなどの運行会社の運賃据え置きや首都ワシントンの地下鉄の運行削減回避の助けとなっている。そうした支援がなく、乗客も増えなければ、交通機関の先行きは暗い。
従業員の職場復帰を目指す企業にとっては、コロナ感染や運行削減、犯罪を警戒する社員を呼び戻す上で通勤は課題だ。警備会社キャッスル・システムズによれば、オフィスへの復帰割合が低い大都市圏はサンフランシスコとニューヨークの2つで、交通機関が多く利用される人口密度の高い地域。一方、車通勤中心の都市では復帰率は高いという。
車通勤の労働者が増えれば、影響は深刻になる恐れがある。ヴァンダービルト大学は昨年の調査研究で、交通機関や相乗りを利用する通勤者の25%が1人乗りの車通勤に切り替えただけで、ひどい交通渋滞が生じると予想。最もリスクが高い都市はサンフランシスコやニューヨーク、ロサンゼルス、ボストン、シカゴだと分析していた。
シカゴでは地下鉄や電車、バスを以前に毎日利用していた人の80%しか復帰を予想していない。サンフランシスコ市の通勤用高速鉄道(BART)は、乗客が2024年までパンデミック前の水準に戻らないとみている。
JPモルガン・チェースなどのウォール街の銀行は従業員に今後数週間にオフィス復帰を指示しているが、他の企業は1940年に米議会で週40時間労働を定めた法律が制定されて以来最も重大なオフィス文化の転換を推進している。
こうしたトレンドは全米に広がっており、サンフランシスコ最大の民間雇用主であるセールスフォースは、大半の従業員に柔軟な働き方を提示している。ニューヨークのベライゾン・コミュニケーションズは、モーニング・コンサルトの調査で回答者3000人中わずか25%しか1年後のオフィス勤務を望まなかった結果を受け、在宅勤務やハイブリッド形式などの働き方を試行する。
原題:Commuters Are Too Scared of Covid, Crime to Get Back on Trains (1)(抜粋)
著者:Elise Young、Danielle Moran、Michelle Kaske
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