茨城にある「減酒外来」に予約が殺到する事情

断酒が難しいなら、減酒から始めればいい

「最初は急に酒量をゼロにすることは考えない。この方の場合は仕事なんですが、本人が大切にしている何かひとつのことを失わないために、1日1本でもいいからお酒を飲む時間を減らしていくのが目標です。これで、お酒をやめられる人も少なくないんです」

男性のショルダーバッグをふと見ると、カッターナイフでざっくり切ったという大きな傷が。「飲めないでイライラしたときにカッターで傷つけたもの。自分がアルコールに依存していたことを忘れないように、わざと持ち歩いているんですよ」。

すぐに、1カ月先まで予約がいっぱいに

そんな吉本氏の「アルコール低減外来」が注目されている。

週1回、治療を行っている前出の北茨城市民病院では、アルコール依存症の患者を約2年で70人以上を診たほか、今年4月に開設した筑波大学附属病院の「アルコール低減外来」にも患者が詰めかけ、あっという間に1カ月先の予約までいっぱいになった。

(写真:筆者撮影)

ここでの治療の目標は、禁酒や断酒ではなく、アルコールの「低減」。アルコール依存症の「酒を減らす」治療法は、昔はほとんどなかったが、2000年代に入ってから少しずつ一般的になってきたものだという。

「世界で、もっともケアが不十分な領域といわれているのが精神疾患。さらになかでもケアが不十分な領域は、アルコール依存症と言われています。これには、治療のために一度は病院を訪れても、酒をやめろと言われて治療をやめてしまう人が多いからとも。そこでやめるのではなく、減らす方法を取ることで、患者さんの受診のハードルを低くしようと始まったのが減酒やアルコール低減をめざす治療です」(同)

さらに吉本氏の「アルコール低減外来」には、もうひとつ受診のハードルを低くしていることがある。吉本氏の専門は総合一般診療科。つまり、内科の患者さんも診れば、子どもの患者さんを診ることもあるのだ。これまでアルコール依存症の治療を担ってきたのは、ほとんどが精神科。受診しやすくなり、東京などから3時間以上かけて通う患者もいるという。

ではどんな治療をするのか。

ここでの治療は、「テスト」「カウンセリング」「投薬」の大きく3つ。最初に行うのが、「AUDIT」と呼ばれるテストだ。WHO(世界保健機関)によって作られたアルコール関連問題のスクリーニングテストで、毎日の飲酒量など10項目の質問に答えていく。

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