茨城にある「減酒外来」に予約が殺到する事情 断酒が難しいなら、減酒から始めればいい

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2019年夏から、吉本氏の「アルコール低減外来」を受診しているという、40代の女性にも話を聞いた。一般企業で働くワーママだったが、2人目の出産で産休を取った数年前から、もともと好きだった酒の量が増え、ストロング酎ハイなどを多いときで1日10本は飲むこともある「典型的なキッチンドリンカー」になってしまう。

産休後、会社に復帰した後も、帰宅後の大量飲酒が止められず、翌朝残った酒で、得意先とのアポを忘れる失態も起こした。

「社会的な生活がお酒で脅かされるようになり、これはまずいと、まず精神科を受診しました。でも上から目線の医師となじめず、3回くらいで行くのをやめてしまった。その後、総合診療科では珍しいアルコール低減外来があることを新聞で知って、北茨城市民病院を訪ねました。専門病院ではないので、とにかく入りやすいというのは大きかった」

まずは酎ハイの「度数」を下げることから

とはいえ受診を始めてからも、やめては飲む、やめては飲むの繰り返し。ちょうどその頃、コロナ禍で家にいることが増え、ますます酒量は増えていった。お酒をやめるきっかけになるような怖い体験を「底付き体験」というが、彼女の場合、このときにも底付き体験があった。「幻覚や幻聴」に悩まされるようになったのだ。

そのとき感じた恐怖が決め手となり、缶酎ハイの度数を下げるなどする減酒から断酒を成功させ、すでに1年が経過した。

「呼気テストでアルコールが出ても、先生は攻めたりしないんですよ。『また止めればいいよ』と励ましてくれるだけです。私の場合、どうしても失いたくなかった大事なものは家族との生活。『子どもの成長をいつまでも見守りたいでしょ』と寄り添ってくれたのがありがたかった」

一時は正常値の30倍にあたる1500もあったγ-GTPも、現在は30台まで低下。それでもお酒を飲みたい気持ちは今もあり、「これからもずっと」アルコール低減外来には通い続けるつもりだ。

ちなみにお酒を飲まなくなった時間は?

「満天の星を見に行く、深夜のドライブなど、お酒の入っていない夜を楽しんでいる」そうだ。

福光 恵 ライター

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ふくみつめぐみ

東京都生まれ。フリーライターを名乗って四半世紀。美術、グルメ、アウトドア、犯罪、芸能、IT、ビジネス、ペット、ファッション、車など、さまざまな専門分野を目指すが、ことごとく挫折。現在、専門なしの薄く広いライターとして活動中

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