クラブハウスで政治話に熱中した中国人の悲劇 香港や天安門事件、ウイグルの話題は即削除

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中国当局は、SNSやインターネットの力をよく理解しているのでしょう。世界中でサービスを提供しているツイッターが、中国では利用できないのも同じ理由です。中国ではウェイボー(Weibo、微博)というツイッターと同じような機能の短文投稿SNSがあります。しかし、このウェイボーでさえ中国当局の監視下にあり、香港や天安門事件、ウイグルなどの話題が出ると、投稿が即座に削除されてしまいます。

中国では、クラブハウスという音声SNSが、当局にとって脅威になると予測し、これを利用できないようシャットダウンしたのです。逆にいえば、クラブハウスはそれほど世の中に影響力を持つSNSだといえるでしょう。

ツイッター、フェイスブック、インスタグラムなど、現在多くのユーザー数を集めるSNSは、そのほとんどがアメリカで生まれ、世界に広がってきましたが、最近ではウィーチャット(WeChat、微信)やティックトック、ウェイボーのように、中国で誕生して世界に広がったSNSも出てきました。

ウィーチャットはインスタントメッセージングアプリで、日本でいえばラインのような機能のアプリです。ユーザーは中国人が多いのですが、世界200の国と地域をカバーしており、ユーザー数は6億人を超えています。

中国のツイッターとも言われているウェイボーでは、会員数は世界中で6億人以上ともいわれており、本家ツイッターが約3億5000万人ですから、2倍近くにもなります。

ティックトックは、短い動画を投稿するミニ動画投稿サイトですが、こちらは2017年にサービスを開始するやいなや、またたく間に世界中に広がり、ユーザー数は6億8900万人にも達しています。

「中国発祥のSNS」は危険?

中国では、ツイッターやフェイスブックといった世界中で多くのユーザーが利用しているSNSが、当局によってシャットダウンされて利用できないため、ウィーチャットやウェイボーが誕生し、多くのユーザーに利用されています。ただし、これらのSNSでも当局の監視が行われています。

これらの理由から、中国発祥のSNSは怖くて利用できない、といった意見も出ています。ティックトックのように、中国以外の国で投稿された動画も、中国当局に監視され、当局に不都合な動画は削除または公開中止にされる、といったケースもありました。

では、クラブハウスはどうでしょう。クラブハウスはアメリカ発祥で世界に広がり、とくに中国とは関係ないように思われますが、実はクラブハウスのデータが中国に送られており、当局がデータにアクセスできるのではないか、といった懸念が出ているのです。

クラブハウスは中国・上海にあるアゴラ社からAPIの提供を受けています。ユーザーごとに独自のIDとルームIDが付けられますが、これが平文(暗号化されていない文字列)でやり取りされているため、アゴラ社が音声データにアクセスできる可能性が高いことが判明したのです。中国では、国家安全保障の保護や犯罪捜査のために、国家が必要と判断すれば企業が保有するデータを提供することが義務付けられています。

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