看護協会の活動内容には、①看護の質の向上、②看護職が働き続けられる環境づくり、③看護領域の開発・展開、を掲げている。質の向上の一環として、独自に「認定看護師」などの資格認定制度を作っている。看護協会は独自に看護師の労働環境の整備に取り組むほか、厚生労働省や都道府県の事業を受け、都道府県ごとに無料職業紹介「ナースセンター」を運営するなどしている。
洋子さんは病院看護部によって看護協会と、政治団体である「看護連盟」にも強制加入させられ、長年、会費も病院がまとめて徴収していた。オリンピック派遣の要請に即座に異を唱えなかった日本看護協会の姿勢に疑問をもった洋子さんと同僚は、「今はWEBで入会や更新ができるようになったので、師長に気兼ねすることもなくなりました。だから、この春、思い切って抜けました」と退会した。
一斉退会で無言のメッセージを発信
中国地方の公的病院で働く看護師の山本久美子さん(仮名、40代)も意を決し、看護協会を退会するつもりでいる。
「私たち現場のナースにとって、看護協会のおかげで何か労働環境が改善したとは思えないのです。だから、職場の仲間たちと会員の更新をせず、脱会しようかと話しています。1人でやめてもきっと協会は何も感じてくれないだろうから、一斉退会することでメッセージを送ろうと考えています」
4月下旬、自治体の要請によって、久美子さんの病院にコロナ病棟ができて患者を受け入れ始めた。東京や大阪ほどの状況ではないものの、ICU(集中治療室)の一部を使って重篤患者の受け入れ体制をとっている。
久美子さんが勤める病院には600人以上の看護師が働き、産休や育休中で未加入状態の看護師以外で少なくとも400人は看護協会に入っている。この病院だけで年間600万円も上納する計算だ。もっと大きな病院では年間の会費の合計が1000万円にもなる。
病棟スタッフには看護業務以外に委員会や勉強会を行う「係」がある。それと同列で会費を集める係がいて、毎年の更新時期の会費徴収は「春のお仕事」と呼ばれていた。協会に未加入だと師長から「入ってないよね」とプレッシャーがかかり、逃げられない。病棟には協会に加入しているかどうかの一覧表があり、やめるにやめられない状態だった。
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