「サッカー競技場でテレワーク」奇策できた事情 コロナ禍で赤字続出Jリーグの切り札になるか

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スタジアムが自前のものであれば、試合日に限らずテレワーク環境を提供し、収入増を図るといった策も講じられるのだが、日本の場合は大半が自治体か第3セクターが施設運営をしている。FC東京の本拠地・味の素スタジアムも株式会社味の素スタジアムが運営主体となっており、彼らと相談しなければ、テレワーク利用をしたくてもできない。そこはクラブがスタジアムを保有・運営する形態が中心で、施設を生かしたビジネスが活発な欧米とは異なる点だ。

そんな中でも、鹿島やガンバ大阪が指定管理者となっている茨城県立カシマサッカースタジアムとパナソニックスタジアム吹田、柏レイソルの自社保有である三協フロンテア柏スタジアムでは実施可能性がないとは言えない。ただ、収益性やスタッフの労力、悪天候に対応できる施設面などの名古屋が直面した課題はやはり避けて通れない。

コロナ禍を乗り切るための努力

いずれにしても、今回の「テレワークスタジアム」のように「お客さんの声をできるところから形にして、ファミリーとの絆を維持する努力を続ける」という姿勢は、サッカー界やスポーツ界がコロナ禍を乗り切るうえで極めて重要だ。

実際、5月2日の大阪ダービーを無観客開催せざるをえなくなったセレッソ大阪にしても、「長居をピンクに染めなあかん!」プロジェクトを展開。ビニールポンチョやTシャツが含まれた企画チケットを販売して1000万円超の売り上げを記録するなど、機動力とアイデアで苦境を乗り切ろうとしている。

数億円単位で減った入場料収入の代わりをすぐに見つけるのは困難としか言いようがないが、可能性のありそうなところから1つ1つ模索していくしか、苦境打開の道はない。

元川 悦子 サッカージャーナリスト

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もとかわ えつこ / Etsuko Motokawa

1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、1994年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。著書に『U-22』(小学館)、『初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅』『「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(ともにNHK出版)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)ほか。

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