頭のいい人と平凡な人で違う「頭の使い方」の差 自分の周りに置き換えると本質が同じと気づく

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場合によっては、広がりのある大きな問題意識に成長するかもしれませんし、逆に解決していく部分が多ければ細部の問題意識に収束していくかもしれません。いずれにしても、質が変わっていくわけです。

考えることに終わりはない

私にとっては、だからこそ考えることがおもしろいと思うのです。

例えば、料理をつくったりコーヒーを淹れたりすることを考えてみてください。そこには、正解というものはありませんし、明確なゴールもありません。

同じ料理人が毎日同じ料理をつくっていて、「今日はよくできた、これは満足だ」ということはあっても、「今日の料理でとうとう正解に達した」ということはないと思います。

料理の喜びは、毎日少しずつ改善していき、自分なりに少しずつ良いものができたというところにあるのだと思います。その点はプロの料理人だけでなく、料理を趣味にする人でも同じです。試行錯誤しながら少しずつ向上していくことに、ある種の楽しみを見いだすのです。

考える楽しみは、これと同じだと思うのです。確固とした正解を求めるのではなく、情報を頭の中で整理しながら、問題意識を少しずつ変容させて深めていき、進歩させていくプロセス自体に楽しみがあるのです。

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考えた結果、新しいアイデアが出てきたり、自分なりに理解できたと思えれば、誰しも満足感やワクワク感を覚えることでしょう。たとえ問題に正解がなくても、料理人と同じく、そこに楽しみを見いだすことができると思います。

おもしろいと思える方向に頭を使っていけば、それがさらに考えることにつながり、能力も身についていくという、良い循環ができてきます。そもそも、正解は誰にもわからないのです。行動した結果、また自分なりにそこから問いかけを発して、より良い方向に向かうことが大切なのです。

考えることはけっしてつらいことでも小難しいことでもなく、楽しいことなのです。

柳川 範之 東京大学経済学部教授

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やながわ のりゆき / Noriyuki Yanagawa

1963年生まれ。東京大学経済学部教授。東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士(東京大学)。現在は契約理論や金融関連の研究を行うかたわら、自身の体験をもとに、おもに若い人たちに向けて学問の面白さを伝えている。主な著書に『法と企業行動の経済分析』(第50回日経・経済図書文化賞受賞、日本経済新聞社)、『契約と組織の経済学』(東洋経済新報社)など。

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