「人流」分析で明らか「自粛疲れ」「規制効果なし」 「感染の波」「政府の政策」「人流」の連動性を分析

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この分析結果を用いて、「感染者数」「緊急事態宣言」「まん延防止等重点措置」「Go To トラベル」といった変数と「居住地」における人流の増減をグラフ化してみた。それぞれが重なり合って影響するわけだが、2回目の緊急事態宣言の影響や、まん延防止等重点措置と人流との相関はかなり弱くなっていることがわかる。また、「居住地」の人流増減と「感染者数」の関係だけを抜き出すと、その影響は第1波から第3波にかけて徐々に小さくなっている。

東京と大阪では特に「強調の失敗」が顕著

特に、人口が多くかつ3回目の緊急事態宣言の対象となった東京都と大阪府について、同様の分析を行うと、やはり東京都や大阪府でも「まん延防止等重点措置」は「居住地」の「人流」の増減にあまり影響しなかったことがわかる。この点において、3回目の緊急事態宣言で大型商業施設の休業要請などのより強い措置に移行したことは、理にかなっている面もある。

しかし最も不安視されるのは、全国レベルと比較して東京都や大阪府では「人流」が「感染者数」増加の影響を受けにくくなっている点だ。他方で、こうした状況になると、強い措置を課し続けてもさらなる反発が出ることも想定される。「協調の失敗」により、感染者数は減らず、経済損失ばかりが拡大するリスクがある。

(注)今回用いたデータは季節調整などが施されておらず、回帰分析を行うための統計的な前提条件を満たしていない面もある。現在使うことのできるデータの範囲内で可能なイベント・スタディとして分析結果を捉える必要がある。
末廣 徹 大和証券 チーフエコノミスト

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すえひろ とおる / Toru Suehiro

2009年にみずほ証券に入社し、債券ストラテジストや債券ディーラー、エコノミスト業務に従事。2020年12月に大和証券に移籍、エクイティ調査部所属。マクロ経済指標の計量分析や市場分析、将来予測に関する定量分析に強み。債券と株式の両方で分析経験。民間エコノミスト約40名が参画する経済予測「ESPフォーキャスト調査」で2019年度、2021年度の優秀フォーキャスターに選出。

2007年立教大学理学部卒業。2009年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修了(理学修士)。2014年一橋大学大学院国際企業戦略研究科金融戦略・経営財務コース修了(MBA)。2023年法政大学大学院経済学研究科経済学専攻博士後期課程修了(経済学博士)。

 

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