マンション住民を悩ませる「隣人の騒音」の正体 マンション内で発生する2種類の音の仕組み

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音に包まれるように感じるのは、空間に伝わった音がいろいろな方向から何度も反射し、時間差をともなって伝わることが大きな理由の1つとなっているのです。

反対に録音スタジオのようなところは、よけいな音が反射するとノイズになってしまうので、空間は比較的狭くつくられ、床や天井、壁も音を吸収する吸音材が使用されています。極力、音の反射をなくし、響きが残らないように配慮されているのです。

要約すると、空間が広くなるほど音の響きは残り、吸音性の高い材料が使われるほど、音の響きは残らないということを知っておいていただきたいと思います。

洋室は音が響きやすく、和室は響きにくい?

これをマンションの部屋にあてはめてみましょう。マンションの部屋にもそれぞれ空間の特徴があります。リビングなど洋室は大きめにつくられていて、床はフローリング、壁は石膏ボードや合板にビニールクロスが貼られているのがふつうです。

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これらの材料は、一般に音を反射しやすい特徴があります。つまりマンションの洋室は大げさにいえば教会やコンサートホールのように音が響きやすい音の特徴を持つ空間といえます。

では和室の場合はどうでしょうか? 一般的に和室は洋室より狭く、床は畳です。また天井も天井板を細い木材が支える竿縁天井になっていたり、壁面にも障子やふすまがあったり、壁紙も珪藻土(けいそうど)風やしっくい風などが使われることがあります。

こうした内装は吸音性が比較的高いため、空間としても音の響きは洋室に比べるとおさえられがちです。とくに稲わらでつくられた昔ながらの畳はひじょうに吸音性が高い床材といえます。

つまり和室の場合、屋外や隣戸から壁を通して伝わってきた音は、洋室に比べると比較的早く小さくなる、すなわち残響時間は短めになる空間といえます。

今はリフォームするときに、わざわざ和室をつぶして洋室に替えてしまう人が多いのですが、音のことを考えると、和室を残しておくのも手かなと思います。もっともその差はごくわずかですので、「強いていえば」というレベルだと覚えておくとよいかもしれません。

井上 勝夫 日本大学名誉教授

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いのうえ かつお / Katsuo inoue

日本大学名誉教授。工学博士。一級建築士。 日本建築学会理事、同関東支部長、同環境工学委員会委員長、環境振動運営委員会委員長、日本音響学会評議員、日本騒音制御工学会理事などを歴任。現在、日本音響材料協会理事。

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