マンション住民を悩ませる「隣人の騒音」の正体 マンション内で発生する2種類の音の仕組み
一方、固体音のほうは、ものがぶつかったときの衝撃の力によって、ぶつかった面が振動し、その振動が床や壁、天井といった躯体を伝わって、ほかの住戸に拡散していきます。ですからまずは衝撃の力を躯体に伝えない「防振」などの工夫が必要になります。
しかしこれは建物の構造とかかわりますので、すでにできあがってしまった建物で構造をいじるのは難しいといえるでしょう。
躯体に振動を伝えないという意味では、カーペットを敷くなど、衝撃を吸収できる床材にするといった工夫も原理は同じです。多少は音を軽減できるでしょう。
それでも椅子から飛び下りる「ドン」という鈍い大きい衝撃音などは、力が大きく低音ということから床をカーペット敷きにしたところで、他住戸に響くのはほとんど変わりません。固体音へのクレームがなかなかなくならないのは、こうした固体音特有の特徴と伝わり方にも原因があります。
空間の形も影響することを覚えておく
また、音の特徴として空間の形も影響します。音は空間が大きければ、反響して音が響きます。これは反射音の効果といえます。教会の聖堂やコンサートホールで音が響くのは、表面が反射性の高い材料で仕上げられ、空間が大きいために音がいろいろな方向から長い時間にわたって反射するようにつくられているからです。
少し難しい話をすると、音が伝わる速さは、毎秒340メートルで一定しています。音は壁があると、ぶつかって反射しながら、だんだん小さくなっていきます。ですから、空間が大きくなればなるほど、音が壁にぶつかって反射し、その音がまた別の壁に反射するのに時間がかかり、音が消えるのが遅くなります。
この特徴が、コンサートホール等の大空間で響きが残る、すなわち、音が小さくなっていくのに時間がかかる原因となるわけです。
さらに、音が反射する壁を、吸音しにくいものにすれば、反射によって音は小さくなりにくいので、より長く響きが残ることになります。この響きの残る時間のことを、専門用語では「残響時間」と表現しています。
そのため長く音の響きを残したい場所、すなわち教会の聖堂などでは、床面や壁面にはわざと音が反射しやすい(吸音しにくい)材料を使っています。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら