キッズ番組としての基本形を押さえながら、肝心の斬新さはワッフルとモチの食事体験を見せる演出にこだわっているところにあります。口を開けることができるワッフルは、実在するシェフたちが作った出来立ての本物の料理を実においしそうに食べるのです。モチも小さな身体を汚しながら、味わいます。
「セサミストリート」の“クッキーモンスター”も実際のクッキーをパクつき、食い散らかしますが、ワッフルの場合、口に入れることができるだけでなく、噛み、飲み込むといった人間が食べ物を食べるときの一連の動作ができます。口の部分が特別にカスタマイズされているのです。だから、ワッフルの口にピザや小籠包、おにぎりなどが運ばれるたびに、平らげているかのように見えるのです。ソースを指で拭って、口に入れる場面まであります。さすがにそのとき、ワッフルの指は汚れたままになっていますが、食の体験が強烈に伝わってきます。
さらに食レポのような表現力も加わります。人形師がリアルタイムで味わい、反応しているという徹底ぶり。これもすべて、子どもたちに食べることの楽しさと幸せを最大限に伝えるためです。
大阪、京都も舞台に登場する
吹替えのクオリティも保証します。学者など専門家がしばしば登場し、小さな子どもが飽きずに最後まで聞くことができるかどうかは微妙なところがありますが、日本語でゆっくり語りかけてくれます。歌やアニメーションのシーンも含めて、全編日本語で楽しめます。
ワッフルとモチが旅する場所そのものに日本も含まれます。2人の行き先はさまざま。グローバルな視点で食べ物がどのように栽培されて、調理されているかを知るために、ペルーの塩田を歩き、韓国のキムチ祭りに参加し、イタリア伝統のパスタを作り、時に火星にまで足を運びます。その中で日本にたびたび訪れているのです。料理番組プロデューサーの中村桃子が本人役で2人を主にナビゲートしながら、大阪や京都などの街中で食べ物に出会い、食事処の厨房で学びます。
神回は5話の日本と縁深い「お米」のエピソードでしょう。各話、テーマの食材と関連づけた深めのメッセージも伝えていくのですが、このお米の回ではモチのルーツを知る旅から“人と人との結びつき”の大切さを知ります。モチの祖先である餅を知るため日本に渡る途中、アメリカでアフリカとの食文化を研究する『The Cooking Gene』の著者、マイケル・トウィティと出会うシーンはこの番組全体の意識の高さを物語っているものにもなります。アメリカでの稲作は奴隷制度が背景にあることを説明し、人との結びつきの弊害に差別があることをさりげなく教えるのです。
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