パナソニックが大枚7000億円はたき米IT企業買収へ

株安で応じた市場の大型買収への評価は懐疑的

パナソニックは23日、米ソフトウエア大手のブルーヨンダー・ホールディングの買収で最終合意したと正式に発表した。パナソニックは現在ブルーヨンダーの20%を保有しており、残り80%を71億ドル(約7800億円)で取得し、完全子会社化する。

パナソニックのロゴPhotographer: Akio Kon/

同社はブルーヨンダーの実質的な株主である米投資会社ブラックストーン・グループとニューマウンテンキャピタルから株式を取得することで合意した。買収総額には有利子負債の返済分も含まれている。

ブルーヨンダーは、サプライチェーン(供給網)の分野で人工知能(AI)を活用した製品の需要や納期を予測するソフトウエア開発を手掛けており、米ウォルマートなど世界約3300社を顧客に持つ。

パナソニックはブルーヨンダーを傘下に置くことで、注力分野と位置付けるサプライチェーン関連事業の進化の加速を狙う。買収後も、ブルーヨンダーのギリッシュ・リッシ最高経営責任者(CEO)らマネジメント幹部が同社に残る方針だという。

楠見雄規最高経営責任者(CEO)は同日夜の会見で、ブルーヨンダーの買収はサプライチェーン事業の強化のために「どうしても必要だと考えた」と強調した。物流の現場で効率を継続的に改善させることを目指しているという。

会見に同席した樋口泰行専務執行役員は、企業の買収を巡っては安定した経営基盤に加えて「しっかりとした経営者がいる」ことが一つの基準だとし、ブルーヨンダーとは経営哲学も合致していることから社内文化の親和性が高いと述べた。

劣後債などへの借り換え視野

買収に必要な資金は、手元資金35億ドルのほか残額をブリッジローンで賄った後、将来的に劣後債などへに借り換えることを予定している。今期(2022年3月期)の第3四半期(10-12月期)までの取得を目指している。

発表資料によると、この取引でのブルーヨンダーの企業価値に対する21年の調整後EBITDA(利払い・税金・減価償却・償却控除前利益)予想の倍率は約33倍となる。

パナソニックは、21年3月期までに営業キャッシュフローの確保や資産売却を進めたことで、約1兆円の余剰資金が生まれる見通しだとし、今回の買収は自社が計画する経営資源・資本配分の中での対応が可能だと説明している。楠見CEOは巨額買収により「他のものを即座に売ることは意図していないし、何も決まったものはない」と述べた。

同社は買収による前期(21年3月期)業績への影響はないとし、今期の業績への影響については現在精査中で重要な影響があることが明らかになった場合には速やかに開示するとしている。

ブルームバーグ・インテリジェンスの若杉政寛アナリストは、「グローバルスタンダードとなる米国市場を攻めるというのは方向性としてはいい」と評価した上で、「出資を一度した後、比率を上げるというのはパナソニックらしい」と述べた。

買収価格については「安いというバリュエーションではないが、評価は未知数で今後様子を見ていかなければならない」との見解を示した。

ブルーヨンダーの買収を巡っては、ブルームバーグが23日午後に合意に近づいていると報じた。報道を受けてパナソニック株の下落幅が拡大し、一時前日比4.9%安の1290円と1月18日以来約3カ月ぶりの日中安値を付けた。同日の終値は3.5%安の1309円だった。

(会見での発言を追記して記事を更新します)

著者:古川有希、日向貴彦

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