「出社削減」その先に起こるオフィスの大変化 「5G」と「AI」が今後のオフィスづくりのカギに

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3年前の記事ではフリーアドレス制の導入で、1人当たりのオフィス面積が5割減になると予想する一方で、新たに生まれつつある3つの潮流を紹介した。

  • ①従業員満足度を高めるウェルビーイングなどの取り組み
  • ②シェアオフィスやコワーキングスペースなど働く場所の分散化
  • ③ベンチャーやスタートアップ支援による新規事業創出に向けたエコシステム構築への取り組み
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以前から②については、建築デザイン事務所、ゼネコン、オフィス家具メーカーなどが、欧米などで広がっていたABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング=活動に適した働き方)の考え方を日本に導入。

活動内容に応じて最適な場所を選ぶ働き方によって、生産性が高いオフィスづくりを模索する動きが始まっていた。しかし、当時はABW導入の投資効果が十分に証明されておらず、自由に働く場所を選択できるIT環境を整えている企業も限られていた。

しかし、満員電車に乗って都心部のオフィスに通勤することが、コロナ禍によって制限されるようになって状況が一変。自宅、サテライトオフィス、カフェなど働く場所が否応なしに分散化されたことで、働き方と働く場所について企業も考えざるをえなくなったわけだ。社員にも、自分にとって効率的に働ける場所をどう選ぶのかが求められるようになった。

「経済の先行き見通しが立たないので、具体的な投資に踏み切る企業はまだ少ないが、コンセプトづくりから相談に乗ってほしいとの問い合わせが増えている」(ロフトワーク)

オフィスデザインを手がける企業からは、異口同音にそうした声が聞かれるようになった。すでに余剰のオフィス床面積を削減する動きが一部に出ているが、アフターコロナを見据えてオフィスのあり方を見直す動きが始まっている。

「センターオフィス」の有効活用が課題

企業が頭を悩ませているのが「センターオフィス」をどうするかだ。テレワーク導入で、大半のオフィス業務は出社しなくても支障がないことに多くの企業が気付いたことで、「わざわざオフィスに出社して行わなければならない業務は何か?」「オフィスに集まることの意味は何か?」といった問題に直面しているのだ。

さまざまな社員が集まりやすいセンターオフィスには、テレワークの普及で一気に拡大したオンライン記者会見などの動画配信ができるスタジオ機能、実際のモノを扱わなければならない実験・試作機能などが必要との声を聞く。

改めて活動内容を見直して、地価の高い都心部に立地することが多いセンターオフィスを、いかに有効活用するかを考える企業が増えてきた。

いずれコロナ禍が収束すれば、以前と同様にオフィスに集まって働こうと考えている企業もあるだろう。しかし、再びパンデミックや自然災害などが発生して、オフィスに集まって働くことができなくなるリスクはある。

事業内容や経営環境が変化すれば、組織、人員体制などを見直さなければならず、オフィスは固定化せずにフレキシブルに利用できるほうが都合がいい。

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