資本主義の語を使わなかった「資本主義の父」 100年前からSDGsとCSVを説き続けた渋沢栄一

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フランスから帰国後、渋沢は明治政府に勤務しましたが、官尊民卑の風潮はますます強く、優秀な人材が「官」に集まる状況を憂い、自らが銀行家として、日本社会に必要とされるさまざまな事業を創造するため役人を辞めました。

渋沢は官尊民卑を打破する手段としての「論語と算盤」(道徳と経済は両立させるべきであるという説)と「合本主義」を導入し、経済界を創出し、日本社会の「民主化」を図ったのです。

商業活動に従事する者の意識と地位の向上をめざし、東京商工会議所、東京銀行集会所など経済団体を創出する一方、将来経済界を担う人材の育成にあたりました。東京商法講習所(現在の一橋大学)に代表される商業教育を通じて、「官」と十分に渡りあえる民間経済人を次々と世に出したのです。

合本主義の三要素

『「空気」の研究』や『日本人とユダヤ人』などの著作で、日本の資本主義社会についてユニークな分析をした山本七平は、渋沢が「合本主義」を唱えたのは、経済・社会革命を行うためだけでなく、「一種のイデオロギー」であったと強調しています。

フランスで見た平等社会への実現は、誰でも、自らが実業家として、平等に自由な経済活動を行い、個人や社会が豊かになることが認められている民主的な社会が前提になっていると気づいた渋沢は、それを実現させるために、合本主義に基づいて経済活動を行いました。

合本主義の中身をもう少し掘り下げてみましょう。渋沢の合本主義は、①設立目的・使命(ミッション)、②人材とそのネットワーク、③資本の3つの要素から成り立っています。

渋沢にとって、合本組織の使命は、社会全体の利益、すなわち公益を増加させることでした。株主や経営者は、公益を増進するという意識を持ち、会社設立の目的や使命を十分に理解したうえで、投資し、経営することが不可欠です。

したがって、組織形態は必ずしも株式会社でなくてもよく、事業の目的を達成するために適した組織であれば、合資会社でも、匿名組合でもよかった。

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