コロナ禍も「生活保護は嫌」申請者の葛藤と現実 素直に申し出る人は2割、自治体の対応にも問題

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2月、神奈川県横浜市神奈川区の福祉事務所で、ダウンロードした申請書を手に、生活保護の申請をしたいと訪れた20代女性に対し、面接した職員は誤った説明や返答をして、申請書を受け取らなかった。仕事も住まいも失っていた女性に職員は「生活保護申請の意思なし」と判断を下し、施設入所を強制した。

そのやり取りを女性が録音していたため、女性の支援団体が違法だと抗議し、神奈川区の福祉事務所、市側は謝罪した。女性は別の自治体で生活保護を受けることになった。

――ある自治体で断られ、他の自治体で受給できるケースはあるのですか。

田川「つい先日も、仕事に就けず、家賃も滞納している女性が相談したら、若いんだから仕事を探せと追い返した事例が都内の某区でありました。私が職員だったときも、住む家がなく、2日間も食べていない状態の人を追い返した自治体があり、その自治体に抗議したことも。

このコロナの情勢では、働きたくても働けない人が多い。働けたとしても正規のまともな仕事につけない人もいる。厳しいですよ。20、30年前と雇用情勢が全然違いますから。非正規や低賃金で働いている人に『ほかに仕事を探せばいろいろあるだろう』と言われても。ちゃんと食べていく賃金もらえるところってなかなかないです」

実際に追い返された事例

田川さんによると、ひとりで相談に行って、体よく追い返された問題事例がいくつかある。 実際に自治体で起こった例を紹介しよう。

●「ここに住民票がなければダメ」「(ホームレスのかたに)前の晩どこにとまったかと聞き追い返す」
→「正しくは住民票がどこにあるかが問題ではなく、居住地があればそこの福祉事務所、なければ現在地でOK。生活保護の実施責任をどこが負うかは大事な問題です」(田川さん)
「(終業前なのに)明日来てくれ、今日は受け付けは終わり」
→「超多忙なことは理解できるが、明らかに違法で不適切」(田川さん)
「居住地が定まらないと申請できない」
→「定まらなくても、申請はでき、保護の開始もできます」(田川さん)
●「うちは、女性なら婦人保護施設で保護することになっている」
→「婦人保護施設はDVなどで逃げてきた女性のための施設。携帯電話は使用できず、相部屋のところも。必要もないのにそこしか利用できないというのは疑問です」(田川さん)
「ホームレスのかたは、無料低額施設(無低)へ」
→「無低は社会福祉法によって定められた生活困窮者が無料もしくは低額で利用できる施設ですが、大人数の相部屋で劣悪な環境のところもある。貧困ビジネスと称される無低もあり、逃げ出した人も多いので要注意」(田川さん)
「ビジネスホテルに泊まりながら生活保護は受給できない」
→「ビジネスホテル代を生活保護の住宅扶助として支給して次のステップに進むことはできる」(田川さん)
「資産価値がある住居を売れば生活できる」
→「自己居住用の不動産は東京なら3000万円強、全国どこでも2000万円程度なら保有は容認される」(田川さん)
「自治体間の格差がありすぎる」
→「開始決定までの生活費に充てる貸付の制度がなかったり、額が少なすぎる自治体もあります」(田川さん)
次ページこういった背景にはどんなことがあるのか
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