コロナ禍も「生活保護は嫌」申請者の葛藤と現実 素直に申し出る人は2割、自治体の対応にも問題
――厚労省が昨年末から生活保護は使っていいんだとホームページなどで言っているにもかかわらず、自治体の窓口では相変わらず、窓口で相談者を追い返す、水際作戦が行われています。
田川「生活保護は最終のセーフティーネットと言われているのに、水際で申請もできずに追い返されています。
先日も、相談メールで、お金が全然ない。福祉事務所に相談に行ったら、社会福祉協議会の貸付があるじゃないかと言って、追い返されたそうです。確かに社協の貸付はあるけれど、お金を借りることになるので、借金になるだけで根本的な解決にならないのです。
実は生活保護制度には『他法他施策』が優先という補足性の原理があって、生活保護法の4条に書かれています。生活保護を受ける前に、生活保護法以外のあらゆる法律や制度を使いなさいとしています。そこで、使える制度があるのでそちらを使ってください。どうしてもダメなら生活保護でと進めるのです。
どうしてもダメなら、とするハードルが高い。もうすでにお金が全然なくて、借金だらけの人に、さらに借金して下さいということ自体はおかしいことだと思いますが、それで乗り切れるようならいいでしょという感覚が役所の側にはある。
自治体の雰囲気にもよりますが、生活保護世帯の数を増やしたくないから慎重に扱えという方針の自治体がないわけでもないのです」
「ひとりで行くと…」窓口のダブルスタンダード
――生活保護の財源はどうなっているのですか。
田川「生活保護費は、4分の3を国が負担しています。残りの4分の1を自治体が負担するのですが、総務省の地方交付金で後から補填されるので、ほとんど実害無し。7割の自治体で得しているという調べもあります」
――ひとりで申請に行くと断られることもあるのに、支援者がついていくとすんなり通るケースもあります。
田川「本当はおかしなことですが、ダブルスタンダードがあって、単身で行ったら保護制度をよく知らなかったので跳ね返された。一方で、付き添い者と行くと、違法なことはしない。とくに付き添い者が弁護士だったり、司法書士だったり、有名な支援団体だったりすると、いろいろ言ってくるのでしっかりやらなきゃいけないぞと自治体職員は身構える。
もちろん公務員はなるべく税金は大事に使う。それが基本なんですが、程度問題で使わなければいけないところは使わなければいけないんですよ。
何がなんでも税金を使わないでおこうと拒むのもおかしいし。人によって対応が変わるというのもおかしいし、他方他施策の利用といっても、ハードな状態にまできている人に、いやいやもっと借金しろとはいえないと思う。ただ平気でそう言う感覚が一部の自治体にはある。全国の自治体も頑張ってはいるんですが、ひどいところがいくつかある」