「海外ルーツ持つ子」増えた日本が知るべき現実

養育放棄、貧困、いじめ・・・困難に直面する若者

伊藤さんは大学生だった設立当初から活動に関わっている。

JFCが増える大きな要因となったのは、女性エンターテイナーたちの受け入れだった。ただ、彼女たちの受け入れは2005年以降、厳しく制限される。背景には女性たちが劣悪な環境で働かされ、重大な人権侵害が起きていると国際的に強く批判されたことがある。

しかし、それから15年以上経った今でも、相談は絶えない。伊藤さんによると、この10年ほどで10代後半~20代になった子どもたちから「父親を捜してほしい」との相談が増えているという。団体の設立当初は、子どもたちは幼く、母親を通じてしか声を上げることができなかった。今は違う。成長した子どもたちは、自らの意志で父親を捜そうとしているのだ。

伊藤さんは言う。

「お父さんに連絡がつくと『もう高齢で年金暮らしだから何もできない』と言われることがあります。でも子どもたちは父親に経済的な支援を求めてはいません。ただ自分のお父さんに会いたい。

フィリピンで頑張って優秀な成績で大学を出た子、すでに就職した子も多いのですが、どの子も決まったように『父親を知らない自分は完成していない』と言うんです。父親の子どもだと認めてもらうことが、自分自身が尊厳を持って生きるために必要だと感じます」

父親には日本に別の家庭があるケースが多い

JFCネットワークが支援するケースの場合、父親には日本に別の家庭があり、日本の生活基盤を守ろうとするため、認知に応じようとしないことが多い。そうした場合は、認知請求裁判を起こすことになる。2009年から施行された改正後の国籍法では、子どもが日本人の父親から認知され、20歳になる前に日本大使館に届け出れば、日本国籍を取得できる。

いわゆる「日本人」らしい容姿や名前を持つJFCは、フィリピン社会のなかで特別視されており、「日本人の子」として認められると、日本国籍の取得を希望した。

JFCネットワークは2009年以降、300人以上の日本国籍取得を手伝ったという。晴れて日本人となった若者は次々に来日した。学齢期の子どもが母親と来たケースもある。伊藤さんのもとには、そうした人たちからの相談も届く。

「Facebookに『元気ですか?』ってメッセージがよく入ります。そういうときは何かあるときですね。経済的に困っているとか、学校や職場でうまくいっていないとか。話を聞いて、深刻な場合は専門的な支援をしている団体を紹介しています」

JFCネットワークの事務所(東京)で、JFCたちから近況を聞く伊藤里枝子さん(右)(写真:野口和恵)
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