保育所や学童保育が不足しているなど、子供ができても夫婦が働き続けながら育てることができる環境が整っていないために、子供が欲しいと思ってもあきらめている夫婦は少なくない。多くの問題を抱えている子育ての環境を改善して夫婦の負担を軽減することこそが、子供の数を増やす方策だ。
だが、少子化対策に効果があるからといって、いろいろな政策に資金をばらまくわけにはいかない。子育て支援をもっと手厚くするためには、効果的な施策に資金を集中することが必要である。また、何でも政府がやろうとせずに民間に任せたりすることも肝要だ。
長寿化が進めばより長い期間働くことが必要
出生数の回復で人口減少を食い止めることに成功したとしても、医療の進歩で平均寿命が延びていけば、日本の人口構造の高齢化は今後も進む。政府は70歳まで働ける社会を目指し始めた。より長期に働くという方向への社会改革は、少子化対策に成功して、人口減少を止めたとしても必要だ。
日本の平均寿命は、1950年頃には男性59.57歳、女性62.97歳だったが、2012年には男性79.94歳、女性86.41歳となり、世界のトップレベルだ。人生が20年以上も長くなっているにもかかわらず、働く期間が昔と同じでは、一生の生活を賄うことができない。働く期間も長くならないと無理だ。
人口が減少も増加もしないという安定状態では、一人ひとりが一定期間働いて自分の一生の生活費用を稼ぎ出すという状態になる。一生が長くなると、その生活を維持するためにはより長い期間働かなくてはならないのは明らかだ。また、単に死亡するまでの年月が長くなっただけではなくて、健康で普通の生活ができる期間も延びているのだから、昔に比べて勤労世代の期間が長くなるのは当然である。
ミクロ経済学では、たとえば「余暇と労働時間の選択」のように、問題を単純化するために、働くことを「負担」として分析することが多い。しかし、働くことには、社会や組織に貢献し、必要とされることで満足を得る、というプラスの面もある。何もしなくても生活費が支給されるよりも、自分で働いて生活を支えることができるほうがよいと考える人も多いだろう。
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