なぜ人口を安定させることが必要なのか 増え続けることも減り続けることも問題

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65歳を超えて70歳までの就業延長を目指していくためには、定年の延長や勤めていた企業での再雇用という手法に代わる新しい働き方が必要だ。「日本で人手不足経済化が進む~生産年齢人口減少のインパクト」(2014年5月10日)で述べたように、企業が多様な働き方を提供することが欠かせない。午前中のみ、午後のみといった短時間労働や、隔日出勤や週休3日など、高齢者の体力や生活スタイルに合わせた柔軟な働き方を提供することは、働きながら子育てをしようとする夫婦にとってもプラスであり、少子化対策にもなるはずだ。

1000年経つと日本の人口はゼロに?!

現在のペースで人口が減少していくと、単純計算では1000年くらい経つと日本の人口がゼロになる勘定になる。計算上の遠い将来の話とは言うものの、いつか日本人がいなくなってしまうということは、心情的に受け入れがたい。日本経済を発展させる努力をしても、将来、日本に住む人がいなくなってしまうのではその甲斐がない。

人口が増え続けることは持続可能ではないが、減り続けることも望ましくない。1億人という目標が達成できるかどうかはわからないが、9000万人でも8000万人でもかまわない。人口減少の速度を緩やかにし、どこかで日本の人口が一定になるようにするという目標は妥当なものだと考えられる。

櫨 浩一 学習院大学 特別客員教授

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はじ こういち / Koichi Haji

1955年生まれ。東京大学理学部卒業。同大学院理学系研究科修士課程修了。1981年経済企画庁(現内閣府)入庁、1992年からニッセイ基礎研究所。2012年同社専務理事。2020年4月より学習院大学経済学部特別客員教授。東京工業大学大学院社会理工学研究科連携教授。著書に『貯蓄率ゼロ経済』(日経ビジネス人文庫)、『日本経済が何をやってもダメな本当の理由』(日本経済新聞出版社、2011年6月)、『日本経済の呪縛―日本を惑わす金融資産という幻想 』(東洋経済新報社、2014年3月)。経済の短期的な動向だけでなく、長期的な構造変化に注目している

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