無知ではすまない「日本のAI活用」に欠けた視点

リクナビ事件で露呈した個人情報保護法の課題

AIを活用したサービスの普及が進んでいますが、課題もあります(写真:metamorworks/PIXTA)
デジタル化の進展もあり、さまざまなところでデータが活用されるようになっています。それに伴って大きな課題になっているのが、プライバシーの保護です。今回はAIとプライバシー権について、新著『プライバシーという権利』を上梓した宮下紘氏が解説します。

本人の同意取得を怠ったリクナビの「内定辞退率予測」

就職活動サイトのリクナビ登録者の内定辞退率の予測スコアが、就職活動を行っていた本人の知らないうちに販売されていた事案が、2019年夏に大きな注目を集めました。この事例についていくつかの論点が想定されますが、応募学生の合理的な期待を裏切る形で、適切な同意を取得せずに内定辞退率の予測スコアを売却していたことが違法な第三者提供とされ、最大の問題とされました。

個人情報保護法では、企業が第三者に個人データを提供する場合、法令で認められる場合などを除いて本人の同意を取得しなければならないのですが、これを怠ったのです。

リクナビ側は、インターネットの行動ログが特定の個人を識別できないものとしていましたが、結局、内定辞退率のスコアを購入した契約企業において個人を識別できることを知りながらサービスを提供していたため、意図的に法の趣旨を潜脱したことが問題視されました。また、一部の利用者については、プライバシーポリシーの改定時に本人の同意を取得していませんでした。

個人情報保護委員会は、2019年8月と12月に2度の勧告を、リクナビを運営するリクルートキャリアなどに発出し、リクナビから内定辞退率のスコアを受領していた35社に対し指導を行いました。勧告の主な内容は、「法に則り適正に個人情報を取り扱うよう検討、設計する体制を整備すること」でした。

東京労働局もまた、リクルートキャリア等に職業安定法および同法に基づく指針の違反があったとして指導を行っています。データを受領していた35社の多くが技術系の大手企業であり、AI技術の活用を促進していた企業であった点も特筆すべきでしょう。これら一連の勧告や指導は、2020年の個人情報保護法改正の動向にも影響を及ぼすこととなったのです。

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