無知ではすまない「日本のAI活用」に欠けた視点 リクナビ事件で露呈した個人情報保護法の課題

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EUの「AI白書の概要」(2020年2月)(画像提供:岩波書店)

もっとも、ここでいう「人間中心」の概念が、原則論としては一致しても、その解釈や運用について日本とヨーロッパとの間でどの程度重なり合うかについては依然としてデータ規制の思想にかかわる問題であり、留保が必要です。

例えば、EUの文書は、人間中心をデジタル・ヒューマニティと置き換える観点からの人間の尊厳に立脚していると考えられますが、日本の文書では、人間のAIへの依存性や人間の行動のコントロールからの脱却が示唆されています。やはりここでも人間中心という抽象的概念を支える思想が重要となってきます。

最も重要になるのが「人間介入の権利」

いずれにしても、人間中心のアプローチが個人情報保護法制において具体的に反映される場合、最も重要となってくるのが、人間への愛惜としての「人間介入の権利」です。

GDPRにおいて明文化された人間介入の権利は、データ主体が自らの意見表明をするために、自動処理による決定の説明を得る権利であると理解されています。これは、自動処理に対する自らの意見表明の権利と自動処理の決定に対して異議申し立てをする権利を行使することが前提です。

この人間介入の権利がなければ、いわゆるブラックボックスという言葉に象徴されるとおり、データがこう示しているから、という理由のみで個人の就職活動の応募やクレジットカードの審査で拒否されることが正当化されてしまいかねません。

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