外資系管理職が「プレーヤー」を辞めない理由 「ジョブ型」雇用で生き残る管理職の条件とは

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ポイントは、十分な情報がない中で、この最初の1枚をどれだけ早く出せるかです。「何のために、いつまでに、何をやって、その結果何が変わり、ビジネスにどう影響するのか」。これを、経営戦略や業務方針と整合的な内容で箇条書きにします。

不十分な情報やアイデアでも方向性さえ間違っていなければ、ファーストアウトプットを出すことで、必要な情報やアイデアが磁石のように集まってきます。その結果、1枚のメモが短期間で洗練されたアクションプランに仕上がっていくのです。

優秀だと言われている人たちは、アイデアの提案、問題解決策の策定、新規資料の作成、問い合わせへの回答などのあらゆる場面で、この最初の1枚を圧倒的なスピードで出すことに長けていました。

私の実感でも日本企業の数倍のスピード感があるアメリカ企業には、このような「やるからわかる」という企業文化があります。これに対して「わかってからやる」というのが日本企業の文化です。この違いが両者の生産性の差の一因となっているように思います。

仕事の価値は「スピード」と「質」のかけ算で決まります。荒削りでも構わないからファーストアウトプットを迅速に出し、そこに集まってくる情報を取り込みながら修正を重ねて質を高めていく──このほうが、圧倒的に「スピード×質」を最大化できるのです。

専門性とマネジメントは両立させるべきもの

プレーヤーとしての自分の専門性を高めていくこととチーム・マネジメントは、どちらを優先させるかといったトレードオフの関係ではなく、マネジャーとして成果を出すためにも、ビジネスパーソンとしての自分の価値を高めるためにも、お互いにいい影響を及ぼしながら両立させるべきものです。

アメリカの企業のマネジャーが、どれだけ忙しくても部下との定期的な1on1(ワン・オン・ワン)ミーティングの時間をとっているのも、そのようにして部下の仕事と成長をサポートするマネジメントが、結果的に自分とチームの「スピード×質」を最大化すると信じているからです。

ジョブ型かメンバーシップ型に関係なく、専門能力によって人材価値が再評価されていく流れにおいては、専門性とマネジメントを両立させるスペシャリスト・マネジャーの時代です。ゼネラリストとスペシャリストは役割が違うので両方必要だという日本企業の考え方は、社員を丸抱えしてきた古い時代の会社都合の発想であり、どこでも通用する市場価値の高い人材を育成するものではありません。

日本企業の管理職の皆さんにとってはチャレンジかもしれませんが、いいものを迅速に取り入れて自分たちのものにする日本人の力は、世界的に見ても非凡なものがあります。試行錯誤しながらもその呼吸をつかみさえすれば、単なるプレーヤーとしてではなく、チームとしてより大きな成果を出す力のある人材として、社内に限らず市場での価値も一気に高まっていくことでしょう。

櫻田 毅 人材活性ビジネスコーチ

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さくらだ たけし / Takeshi Sakurada

アークス&コーチング代表。九州大学大学院工学研究科修了後、三井造船で深海調査船の開発に従事。日興證券(当時)での投資開発課長、投資技術研究室長などを経て、米系資産運用会社ラッセル・インベストメントで資産運用コンサルティング部長。その後、執行役COO(最高執行責任者)として米国人CEO(最高経営責任者)と共に経営に携わる。2010年に独立後、研修や講演などを通じて年間約1500人のビジネスパーソンの成長支援に関わる。近著に『管理職1年目の教科書』(東洋経済新報社)がある。

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