金融庁の元幹部が明かす保険行政の限界と課題 「金融行政は保険会社に依存してしまっている」

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SBI生命保険の小野尚社長は「1人ひとりの契約者の声を大切にするべきだ」と訴える(撮影:梅谷秀司)
新型コロナウイルス一色に染まった2020年度は、営業職員を通じた契約を主力にする生命保険会社にとっては苦難の1年だった。
対面の強みが一転して弱みに転じ、営業活動の自粛を余儀なくされた。その一方、非対面を強みに新規契約を急拡大させたのがインターネット販売を中核に置く生保各社だ。
中でも、2008年に営業を開始したライフネット生命、アクサダイレクト生命に続き、2016年2月からネット専用保険の販売を開始したSBI生命保険は好調だ。同社の2020年4~12月の新契約件数は前年同期比約183%増の約1.8万件となった。
その同社の社長に2019年4月に就任したのが、金融庁の監督局保険課長や総務企画局総括審議官などを歴任した小野尚氏だ。規制当局と生命保険経営の両方の経験を持つ小野氏に、生命保険ビジネスや金融庁による生命保険行政の課題について聞いた。

コロナでシンプルな商品が選ばれた        

――2020年度は新型コロナを抜きには語れない1年になりました。御社はどんな影響を受けましたか。

当社は個人向け保険では、インターネット販売に加えて保険ショップなどを通じた販売を行っている。住宅ローンや事業ローンの利用者向けに、金融機関を通じて団体信用生命保険(団信)も取り扱っている。

緊急事態宣言などで保険ショップや金融機関は影響を受けたが、ネット販売は想定以上に好調で、2020年4~6月の個人向け保険の新契約件数は、前年同期比で3倍以上伸びた。

――ネット販売が好調だったのはなぜでしょうか。

理由は3つある。1つ目は、コロナの影響で多くの人が巣ごもりになり、インターネットを活用する人が非常に増えた。(保険商品の購入も)ネット利用のハードルが相当下がったと思う。

2つ目は、コロナの恐怖を身近に感じて死や病気に対してのリスク意識が高まり、保険未加入の人たちのニーズを喚起した。3つ目は、在宅の時間が増え、加入している生命保険の見直しにつながった。

東洋経済プラスの連載「問われる保険営業」では、この記事の続きを無料でお読みいただけます。連載では保険営業にまつわる課題を取り上げています。

・再燃するハローワーク前の「採用活動」

・日本生命、コロナ禍でも「対面でアポイント」

・ノルマ未達なら「雇用契約打ち切り」の無惨

・生保レディ「大量採用&大量脱落」の悪循環

・インタビュー/明治安田生命・根岸秋男社長

・元金融融庁幹部が語る「保険行政」のあり方

高見 和也 東洋経済 記者

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たかみ かずや / Kazuya Takami

大阪府出身。週刊東洋経済編集部を経て現職。2019~20年「週刊東洋経済別冊 生保・損保特集号」編集長。

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