「技術革新の追求を礼賛する人」に伝えたい真実 失敗例は多数!机上の空論より優先すべきこと

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さらに、経済指標としてGDPを利用することにも納得がいかない。なぜならGDPは、国内で1年間に取引された商品やサービスの付加価値の総額にすぎないのだから。生活の質が向上して経済が成長した場合だけではなく、国民や環境に悪影響が及んだ場合にも、GDPが増加する可能性はある。

アルコール飲料の売り上げが伸びて、飲酒や薬物の影響下での運転が増えて、自動車事故が増えて、けが人が増えて、救急病院での治療が増えて、投獄される人の数が増えても、GDPは増加するのだ。さらに、熱帯地方で違法な森林伐採が増え、森林破壊が進み、生物多様性が失われ、木材の売り上げが伸びても、やはりGDPは増加する。

このようにGDPを指標にしたところで、あまり当てにならないとわかっていながら、世間はいまだにGDPの成長率に一喜一憂し、高ければ高いほどありがたがっている。GDPが増加した理由など、おかまいなしだ。

こうした例からもわかるように、人間の思考には不合理な面がたくさんあって、理性的に考えればおかしなほうを好む傾向がある。クレージーで突拍子もないイノベーションについてはあれこれ夢想するのに、みんなが困っている共通の課題について熟考し、すぐにでも実行に移せる実用的なイノベーションを活用しようとは思わないのだ。

だがみなさんには、ぜひここで考えなおしてもらいたい。「ハイパーループ」や「永遠の生命」などという机上の空論に踊らされるよりも、飛行機の搭乗方式を見直すほうがよほどましではないだろうか。

製造業の「相対的な」重要性は低下

次に、イノベーション創出がつねに求められている製造業について見ていこう。製造業はここのところ、大きくなっていると同時に小さくもなっている。2000年から2017年にかけて、世界の製造業生産高は2倍以上になり、6兆1000億ドルから13兆2000億ドルになった。

一方で、製造業の「相対的な」重要性は急速に低下していて、かつての農業(現在、世界の経済産出高に占める農業の比率は4%にすぎない)と同じ道をたどっている。国連が公表している国別の統計によれば、製造業が世界の経済産出高に占める比率は、1970年の25%から2017年には16%に減少している。

この減少傾向は株式市場にはっきりあらわれていて、世界有数のメーカーよりも株式価値が大きいサービス業の企業はたくさんある。

2019年末、フェイスブックの株式時価総額は約5750億ドルで、世界屈指の自動車メーカー、トヨタの3倍近い額となっている。またヨーロッパ最大のソフトウェア企業SAPの株式時価総額は、ヨーロッパ最大のジェット旅客機メーカーのエアバスより60%も高い。

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