「技術革新の追求を礼賛する人」に伝えたい真実 失敗例は多数!机上の空論より優先すべきこと

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失敗に終わったイノベーションの代表格である高速増殖炉。日本も巨額の資金を投入したが、実用化できなかった(写真:岡田広行)
世界のリアルな姿を捉えるには、数字をチェックするのがいちばんわかりやすい。ただし、参照した指標や数字の受け止め方によってその姿が大きく違って見えてしまうこともある。今回はイノベーションと製造業に関する分析について、バーツラフ・シュミル氏が新著『Numbers Don’t Lie』を基に解説する。
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イノベーションを崇拝するのは間違い

現代社会はイノベーションにとりつかれている。2019年末の時点で、グーグルの検索エンジンで「イノベーション」というワードを検索すると、そのヒット件数は32億1000万件で、「テロリズム」(4億8100万件)、「経済成長」(約10億件)、「地球温暖化」(3億8500万件)といったワードのヒット件数を軽く超える。

この現象からもわかるように、イノベーションがありとあらゆる扉をひらくと現代人は思い込まされている。これからは寿命が100歳をらくに超えるようになり、人間の脳とAIが融合して意識を共有できるようになり、太陽エネルギーだって実質無料で利用できるようになるはずだ、などなど。

こんなふうにイノベーションをあがめたてまつって、なんの疑念も差しはさまずに信じ込むのは、2つの理由でまちがいだ。

第1に、これまで莫大な研究費を費やしたあげく失敗に終わった大規模基礎研究が多々あるというのに、その事実をまるで無視しているから。

第2に、私たちには、もっと優れた行動方針があるとわかっていながら、それより劣る行動をつい習慣として続けてしまう傾向があるのに、その事実を見て見ぬふりをしているからだ。

そうした失敗に終わったイノベーションの第1のカテゴリーに分けられる代表格は、やはり高速増殖炉だろう。発電しながら消費した以上の核燃料を生成するという触れ込みだったものの、結局、長々と莫大なコストを食うばかりでほとんど稼働せず、イノベーションの失敗例となって終わったのである。

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