乗車時に検温徹底、アジアの鉄道「コロナ禍1年」 切符オンライン化進展、行動追跡アプリ活用も

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それでも国内の移動需要が大きく減少している理由は、「もしもの場合」に備え自ら自粛している人が一定数いること、また経済の落ち込みで旅行どころではないという層も少なからず存在することなどが挙げられるだろう。

コロナ禍を受けて2020年5月からジャワ島管内で走った臨時列車。客車はわずか2両のみで、ほかは荷物車、食堂車、発電車(筆者撮影)

KAIは2020年4月、利用者数の減少を受けて全列車の約半数にあたる243本の運休に踏み切ったが、さらに5月からはすべての長距離列車の運行を取りやめ、代わりにジャワ島管内で1日3往復の臨時列車(乗車には所属会社などからの乗車申請レターが必要)を設定した。これは昨年の場合4月下旬から始まったイスラム教における断食月、ラマダンに対応するものだった。

例年、ラマダン明けのレバランには約2000万人が故郷に帰省する。運輸省は早期の帰省を阻止するため、同年4月下旬から国内の州境をまたぐ長距離交通をすべて運休にすると発表しており、KAIもこれに従った。しかし運輸省はこれを数日後に撤回し、航空便やバスは運行を継続した。マイカー規制もほぼ有名無実であったことから、帰省は事実上容認され、中部ジャワや東ジャワでの爆発的感染拡大に至った。しかし、鉄道の運転が順次再開されたのは6月で、最大の繁忙期と言うべきレバラン期間には1本も定期列車が運転されなかったのだ。

当初予定では、レバランに帰省しなかった人々を救済するために2020年のクリスマスから2021年の年始にかけて約1週間半の連休を設けることになっており、鉄道会社もここを挽回のチャンスと狙っていた。しかし、感染者数の再増加を受けてこの連休は急遽白紙撤回され、政府は年末年始の帰省や旅行を控えるよう呼びかけた。その結果、KAIは年末年始(12月18日~1月6日)の輸送実績が前年に比べ82%減少。2度の書き入れ時を失ってしまった。

実際に列車に乗ってみると…

1月下旬、ジョグジャカルタに行く際に鉄道を利用した。昨年の運転再開時から、旅客の便宜を図るため、主要駅での迅速抗体検査が提供(10万5000ルピア=約800円)されているが、利用者がわずかながら戻りつつあるジャカルタ地区の駅では、日によってかなりの待ち時間が発生しているとも報じられている。また、KAIも当日の乗車直前の検査では列車に乗り遅れる場合もあるとアナウンスしていることから、途中駅のチルボンから乗車することにした。

誰もいないチルボン駅(筆者撮影)

乗車当日の朝に駅へ向かうと拍子抜けするくらい誰もおらず、普段の賑わいが噓のようである。抗体検査場も当然誰もおらず、今からチケットを購入して検査後にそのまま乗車できるか尋ねると問題ないとのことで、2時間後に出る午前中唯一のジョグジャカルタ方面行き特急のチケットをスマホで購入した。

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