乗車時に検温徹底、アジアの鉄道「コロナ禍1年」 切符オンライン化進展、行動追跡アプリ活用も
さて、インドネシアとは対照的に、人々の活動により厳しい制限を課したマレーシアやタイの鉄道はどのような対策を打っているのだろうか。
とくに移動を厳しく制限したのはマレーシアだ。同国は昨年3月から5月にかけて、外出と州間移動の禁止を含む「MCO」と呼ばれる強い活動制限令を発出した。その後、年末にかけて感染者が再び増加したことから、今年1月から3月にかけて首都クアラルンプールと一部の州に再び活動制限が課された。外出禁止は除外されたものの、州間移動は再び禁止されることになった。
マレー鉄道(KTM)は、活動制限令下では首都圏近郊の通勤電車を含む大幅な運休を実施している。現在は活動制限がかなり緩和され、列車の運転も若干ながら再開しているが、MCOおよびその緩和版のCMCO期間中、州間移動には警察などからの許可証明が必要である。
ただし乗車方法は簡単で、検温および行動追跡アプリの「My Sejahtera(マイセジャテラ)」のスキャンが求められるだけだ。マスクの着用は必須であるが、抗体検査などは必要ない。インドネシアと同じく長距離列車は全車座席指定だが、すべての座席を発売している。最近の列車の発券状況を見ると、平日はビジネス需要のあるクアラルンプール―イポー間などは若干席が埋まっている列車もある。しかし、土日は1列車で数席しか発券されていないこともあり、活動制限が解除されるまでは厳しい状況が続きそうだ。
タイも行動追跡アプリを活用
普段なら外国人観光客で賑わうタイは、昨年3月に非常事態宣言が発出されて夜間外出が禁止となった。ただ、外出そのものの制限はなく、県間移動についても検問は実施しているものの完全な禁止にはなっていない。
ただし、タイ国鉄は非常事態宣言に則り、昨年3~5月にかけて長距離優等列車を大幅に運休した。一方で、通勤にも利用されている自由席の近・中距離普通列車に車両を増結して混雑緩和を図った。その後、長距離列車は順次運転を再開したが、年末からの感染拡大で再び運休が発生。3月以降、順次運転を再開している。
この間に、長距離列車のチケット購入時にはインドネシアやマレーシア同様に個人情報の入力が必須となった。ネット予約システムも改良され、オンライン販売への誘導が始まっている。また、乗車には現在のところ陰性証明書の提示義務はないが、ここでも行動追跡アプリが活用されている。「タイナチャ」と名付けられたこのアプリはマレーシアの「マイセジャテラ」とともに日常生活に欠かせないアプリとなっており、コンビニやレストランなど店舗に入るときスキャンが義務付けられていることも多い。
このほか、検温やマスク着用の義務があるのも他国と同じである。車内のソーシャルディスタンス確保も徹底しており、チケット発券枚数は座席定員の5割に抑えられ、隣やボックスシートの真向かいは必ず空席となるよう考慮されている。ただし、3月以降のシートマップを確認すると、全座席の発売が再開されている。4月3日の空席状況を照会すると、区間によっては5~6割ほど席が埋まっており、利用者が徐々に戻っているように見える。
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