乗車時に検温徹底、アジアの鉄道「コロナ禍1年」 切符オンライン化進展、行動追跡アプリ活用も

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駅での抗体検査サービスは列車利用者限定のサービス(市中価格より若干安い)であるため、スマホのQRコードチケットと購入時に入力した身分証明書(パスポート)を提示し検査代金を支払う。

そのまま検査台に案内され、15分ほど待った後に晴れて陰性証明書を取得した。ちなみに、駅窓口でのチケットの発売は当日分の発車3時間前までの列車限定で、一部駅では窓口の完全廃止も実施されており、明らかにオンライン購入に誘導する動きが見られる。

改札では通常と同じスマホのチケット画面と身分証明書の確認に加え、軍人が先ほど取得した陰性証明書をチェックする。ただし形式的なもので、旅行目的や滞在場所について聞かれることもない。駅では車内に入ったら装着するようにとフェイスシールドが配布されている。

食堂車はメニューが減っているものの営業していた(筆者撮影)

列車が到着すると、車内には5人ほど乗客の姿があった。KAIは乗車定員を座席数の7割に削減している。完全な1座席空けになっていないのは不思議だが、家族2人での利用などを考慮しているのだろう。航空機や長距離バスは座席定員の100%のまま(さらにバスは陰性証明書が不要)であり、先のフェイスシールドとともに乗客に安心感を与えるための鉄道会社独自の施策と言える。もちろん、予約時にはシートマップで隣に誰も来ない席を選べる。車内では軍人が検温のため定期的に巡回していたが、フェイスシールドを着けるかどうかは乗客の判断に任されていた。

ちなみに、食堂車はメニューが減っているもののしっかり営業していた。逆に各車両への巡回販売は休止されており、表向きは飲食禁止とは言わないものの、客室内ではなるべく飲食してもらいたくないという雰囲気が感じ取れた。

新たな検査導入で旅客増

鉄道は年明け以降、春節やヒンドゥー新年といった連休のたびに一部の運休を解除して宣伝に打って出ており、列車本数は長距離路線を中心に通常の5割程度まで回復してきている。

また、2月からは迅速抗体検査に加え、「Genose」と呼ばれる呼気検査が導入されている。国立ガジャマダ大学のチームが開発した新たな検査方法で、費用が2万ルピア(約150円、3月20日から3万ルピア=約230円)と従来より大幅に安く検査を受けられるのが特徴である。ただ、保健省の使用許可は下りているものの専門家からはこの検査方法の信頼性を疑う声も多い。

新たな検査方法として導入された呼気検査の試験袋を職員に手渡す乗客(筆者撮影)

この呼気検査は3月末までにジャワ島管内44駅に拡大されているが、乗客は従来通りの迅速抗体検査と選べるようになっている。もっとも、迅速抗体検査の結果でさえ100%正しいとも言い切れず、安心材料の一つでしかないことを考えれば、安価な検査方法の導入は歓迎されるべきだろう。実際、利用者増加の効果はてきめんに表れており、呼気検査が本格導入されたヒンドゥー新年の連休には満席になる列車も出ている。また、4月からは一部空港でも呼気検査を導入している。

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