シャンシャンに弟妹?上野「新パンダ舎」の底力 4年ぶりとなる子パンダ誕生の期待もかかる

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新パンダ舎は、中国国内の施設設計の基準や飼育管理基準も参考にしている。パンダを直接観覧できるようにしたのは、基本設計と実施設計を手がけた翔設計(東京都渋谷区)の提案だ。また、公開エリアの室内には、パンダの背後に大きな写真がある。これは中国の風景で、同社が用意した。室内でも、パンダが外にいるように見えることを意識したそうだ。

翔設計執行役員開発本部本部長の山木慎介さんは「動物園を計画する際は、動物・植物・飼育・観覧・修景の全てをしっかり理解することが大切です」と話す。山木さんはパンダの本や論文を読むなどして、パンダへの理解を深めた。さらに、モートを採用しているアドベンチャーワールド(和歌山県白浜町)のパンダ舎や、中国ジャイアントパンダ保護研究センターの都江堰基地(中国四川省)も見に行き、上野の新パンダ舎の参考にした。

野生のパンダに比べ、運動量が少なくなりがちな飼育下のパンダのための工夫も凝らした。

屋外放飼場にはパンダが登り降りする起伏がついており、多くの植物が植えられている。パンダが水浴びできる水場もある。パンダのふるさと中国・四川省の山岳地帯をイメージして造られた。

ガラス越しでなく直接観覧できるエリア。擬岩によるほら穴と擬木がある屋外放飼場には起伏がついており、多くの植物が植えられている。岩や水場もある。パンダのふるさとの中国・四川省の山岳地帯をイメージして造られた。(写真:筆者撮影)

「来園者はパンダの自然な姿に接して、パンダ本来のさまざまな行動を観察できるようにしています」(前・東京都建設局東部公園緑地事務所の永田雅之・動物園整備担当課長)。

さらに、モルタルで造った擬木(ぎぼく)や擬岩(ぎがん)も配置した。本物の岩だと、重くて地面に大きな荷重がかかる。一方、擬木や擬岩なら、希望の色・形・大きさに造形しやすいメリットもある。擬木・擬岩は一体ずつ模型を作り、大きさや配置を検討した。

建築工事を担当したトーヨー建設(東京都葛飾区)工事事業本部特建工事部工事主任の西口岬希さんは「パンダの行動を予測するのは難しく、建設時は、パンダが壊すかもしれない、逃げるかもしれないということに、かなり注意を払いました」と振り返る。

擬岩をつくる際は、モルタルで固め、模様などを着色する。スリット(溝)は縦方向に入れた。横方向だとパンダが手をかけて登り、塀を乗り越える恐れがあるためだ。こうしたことを飼育係に何度も確認してもらいながら、細部までこだわってつくった。

中国側からのアドバイスも

リーリーがいる屋外放飼場では、ほら穴状の石組みが存在感を放っている。これも擬岩だ。当初の設計図になかったが、工事中に中国側から「パンダが日差しを遮ることができる場所があるといい」とのアドバイスを受け、追加が決まった。

パンダは暑さが苦手だ。筆者が2020年11月に見ていると、リーリーはほら穴に入り、リラックスしたかのように横たわった。

ほら穴は、寝ても立っても、ちょうど良いサイズ。でもリーリーに合わせて造ったわけではなく、元は既製品のボックスカルバート(主に管路などに使う箱型のコンクリート構造物)だそうだ。

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