ドラッカーと『論語』の意外な共通点とは? 『もしドラ』ファンなら、論語にも挑戦してみよう

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『もしドラ』のキーワード、「真摯さ」は戦略的翻訳

『もしドラ』でみなみは、『マネジメント【エッセンシャル版】』のなかに、次の言葉を見出して感動する。

「人を管理する能力、議長役や面接の能力を学ぶことはできる。管理体制、昇進制度、報奨制度を通して人材開発に有効な方策を講ずることもできる。だがそれだけでは十分ではない。根本的な資質が必要である。真摯さである」

そして「真摯さってなんだろう」と考え、思わずハラハラと涙を流すところから話が展開する。「真摯さ」はまさに『もしドラ』のキーワードである。

ところが、私の見解では、これは誤訳に値するのではないかと考えている。元の言葉は “integrity of character” であるが、これはどう訳しても「真摯さ」にはならない。

このみなみが感動したパラグラフの、「だがそれだけでは十分ではない。根本的な資質が必要である。真摯さである。」という箇所は、野田一夫ほか監訳、上田惇生ほか訳の日本語全訳版『マネジメント――課題・責任・実践』(ダイヤモンド社、1974年)では次のようになっている。

しかし、結局のところ、人材を開発するには、ある根本的な資質が経営管理者に要求されるのである。この根本的な資質とは、技能を学びとったり、課題の重要性を強調したりして創出できるものではない。それは、人間としての誠実さである。

この上田氏も参加した最初の翻訳では、「人間としての誠実さ」となっているが、これは妥当な訳である。『研究社英和中辞典』によれば、“character”の意味は「道徳的・倫理的な面における個人の性質」と説明されている。「個人の性質」であるから、この場合は「人格」と訳すのが一番良いと思う。

一方、“integrity” は「高潔、誠実、清廉」という意味が主で、用例として、「a person of integrity 高潔な人、人格者」が挙げられている。それ以外に「完全性」とか「一貫性」とか「統合」という意味もある。この言葉の語源は、ラテン語の「健全、完全」を意味する“integer”であり、ラテン語の辞書を見ると、もともとは「手が触れられていない」という意味だという。

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