インバウンド消滅でも「中国人の爆買い」招く策 メイドインジャパンは相変わらず人気が高い

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なお、越境ECの発展に伴い、日本企業のOEMにも好機が生まれている。中国のある老舗漢方薬メーカーが、日本の品質および「メイドインジャパン」のブランド力に惹かれ、自社の越境ECで展開するべく、飲料・食品・サプリメント・スキンケアなどの日本のOEMメーカーを探している、という話もある。

日本企業が越境ECに直接参入をしなくても、中国に販路を持つ大手企業と現地の消費者にマッチする商品を共同開発することで、間接的に越境EC進出につなげる戦略もある。

プロモーションの3つのポイント

中国向けの越境ECで、いちばん肝心なのは「どうやって売るのか(プロモーション)」だ。筆者が話を聞いた日本企業の中国向け越境ECの販売・マーケティング会社の多くは、中小企業も大企業も、日本で販売する商品をそのまま越境ECサイトに持ちこんでいるケースが多い。

しかし、他国企業のプロモーションに比べると「いちばん残念」な点だと筆者は思っている。以下では、プロモーションを検討するうえでのポイントを、3点指摘したい。

1つ目はストーリー作りだ。ECの場合、対面で直接消費者に商品の説明ができないため、ユーザーに選んでもらうために利用シーンをイメージできる商品のストーリーが必須である。

また、「日本では人気がある商品」ということだけで中国の消費者の心を動かせないため、商品を含めた中国人消費者が共感できるモノガタリ、またはターゲットした消費者が惹かれる話題を語らなければならない。

例えば、上述のAさんが最近リピートしているボディローションは、フランス製の高価な商品だ。その商品のストーリーは、「赤ちゃんまで使える安心成分」×「フランスのお母さんにも好評」「親子で一緒に塗って楽しく時短になる」だ。Aさんが欲しいポイントを全部押さえているのだ。

ベルサイユのばらコスメ(写真:筆者提供)

また、トレンドをつかむということも重要な要素である。現在、中国の若い世代の間で、「べルサイユ文体(凡爾賽文学)」が流行っている。これは、自分の成功や、贅沢な生活を、あえて反語を使って自慢する「あざとい」SNSのつぶやきを指している。

例えば、「今日は旦那からベントレーの新車をもらった。ブルーの限定カラーで私の30歳のプレゼントだって。でもね、私ね、ピンクのベンツが良かったのよ。どうしよう、センスがない夫って、本当に困るわ」というような、自慢交じりの、ジョークである。

実は、この流行りに恩恵を受けそうな日本商品がある。それは、「ベルサイユのばらコスメ」だ。名前に「ベルサイユ」と入っているため、ネット販売において話題を作りやすい。実際、関連商品の商談会で、多数の中国の越境ECバイヤーは非常に興味を示していた。

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