「コロナ給付金」を株に突っ込む米国人の思惑 米国株の上昇を支えているのは個人投資家だ
投資会社ハイタワー・アドバイザーズのマネージングディレクター兼パートナー、パトリック・フルゼッティによれば、「給付金は株式市場にさらなる熱狂、さらなる投機をもたらす可能性がある」。「スティミー(stimmy)」とはコロナ給付金を指してネット上でよく使われる言葉だが、フルゼッティはこの用語を持ち出してこう言った。「スティミー」は人々の証券口座に移され「取引資金となるだろう」。
パンデミックが始まる前の10年間、株式市場の売買のうち個人が占める割合は10分の1程度だった。ところが、ゴールドマン・サックスのアナリストによると、個人の売買シェアは昨年、4分の1に迫る水準にまで高まったという。
1人当たり最大で3200ドルを直接給付
経営不振のビデオゲーム小売りチェーン、ゲームストップの株価が急騰し、ウォール街の大手ファンドが大損失を被った事件の背景にも、個人投資家の存在があった。個人投資家の売買が押し上げ要因の1つとなり、S&P500種株価指数は昨年3月の安値から80%上昇した。ビットコインなどの暗号通貨に上昇相場をもたらしているのも個人投資家だ。
コロナウイルス支援・救済・経済安全保障(CARES)法の一環として昨年4月に1200ドルの現金給付を行って以降、連邦政府は基準を満たした個人に対し、1人当たり最大で合計3200ドルを直接給付してきた。多くの人々の生活がこれによって救われたのは確かだ。
だが、コロナ禍で仕事や貯蓄に影響の出なかった人々の収入も、これらの給付金で膨らんだ。そして、コロナ禍で旅行ができなくなり、レストランが営業を停止し、通常の社会活動が止まる中、景気のテコ入れを目的とした給付金のかなりの部分が株式市場に流れ込んだ。
アメリカで何百万人という人々が連邦政府による緊急支援金をギャンブルに回しているという現実は、今回の景気後退と政府対応の特異性を物語る。
パンデミックが始まって以来、アメリカでは約900万人分の雇用が失われたが、失業状況には偏りがある。人々が集まることを前提にしたバー、レストラン、観光をはじめとする低賃金産業が大打撃となる一方で、高収入の専門職が働くプロフェッショナルな業界の立ち直りは早かった。在宅勤務への切り替えが可能だったからだ。