「コロナ給付金」を株に突っ込む米国人の思惑 米国株の上昇を支えているのは個人投資家だ
カリフォルニア州サクラメント在住のトランペット奏者エイブラハム・サンチェス(28)は、コロナ給付金の使い道をはっきりと決めていた。
多くのアメリカ国民と同じく、サンチェスはコロナ禍の中で株取引を始めた。そこで先日、自身の銀行口座に連邦政府から1400ドルが振り込まれると、サンチェスは即座に200ドルだけを手元に残し、それ以外の全額を投資アプリ「ロビンフッド」のオンライン取引口座に入金した。そして、その資金の大半を使って、苦戦を強いられている映画館チェーンAMCエンターテインメント・ホールディングスの株式を80株購入した。
給付金が後押しする個人の投機熱
サンチェスは決して裕福というわけではない。所属するブラスバンドのライブから得ていた収入はコロナ禍で半減。それでもやりくりできているのは、店舗管理者という本業があるからだ。
パンデミックが再燃し、仕事がなくなる心配はある。ただ、3人のルームメイトと一緒に暮らすサンチェスは、給付金がなくても別に生活が破綻するわけではない。というわけで、この給付金をギャンブルの軍資金に回すことにしたのだ。
サンチェスのような個人投資家の投機熱は、経済が今もコロナ禍に揺さぶられている状況とは矛盾するように見える。だが、経済へのダメージを和らげるためにアメリカ政府が導入した目玉政策、つまり個人への現金給付は、個人の投資を大きく後押ししてもいる。
ドイツ銀行のアナリストによる最近の試算によれば、直近の現金給付からは1700億ドルもの資金が株式市場に流入する可能性がある。ドイツ銀行が行った調査に対し個人投資家は、給付金のおよそ4割(つまり5ドル当たり2ドル)を株投資に回す予定だと回答した。25~34歳の個人投資家では、この割合は5割に高まる。