米国の「高圧経済政策」は一種のギャンブルだ UBS証券の足立正道チーフエコノミストに聞く

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――マイナス金利を深掘りした場合の金融機関収益への副作用を考えて、貸出促進付利制度も創設しました。

日銀としては、金融緩和の限界論を否定する意味合いが大きかった。デフレ懸念が再び高まったり、円高が進んだりしたときに、マイナス金利を深掘りする余地があることを示したかった。

だが、(今回の付利制度で)副作用を低減できるのであれば、今どうして深掘りをしないのか。2%の物価目標から遠ざかっている現在、本来なら追加緩和すべき状況にある。それをしないで準備だけするのは姑息にもみえる。

マイナス金利を深掘りすれば副作用が一段と大きくなることを日銀自身が認めているわけで、実際に深掘りするのは依然としてハードルが高い。

2%の物価目標達成はきわめて難しい

――2%の物価目標達成についてはどうみていますか。

あだち・まさみち/1991年日本銀行に入行。調査統計局、金融市場局、フランクフルト事務所を経て2002年R&I(格付投資情報センター)社に出向。2006年からJPモルガン証券シニアエコノミスト。2019年から現職。1999年欧州経営大学院でMBA取得(写真:UBS証券)

きわめて難しい。(労働需給を意図的に過熱させて成長力強化を狙う)高圧経済的な政策をずっと続ければ、もしかしたら何年後かには(2%目標を)達成できるかもしれないという程度だ。景気循環の波にもよるし、日本だけの事情で決まるわけでもない。

黒田総裁の立場に立てば、2%の達成ができるかできないかではなく、「するんだ」ということでやっている。達成がいつかというのは別問題で、海外に比べて時間がかかることは間違いない。マイナス金利政策の解除についても、できたとしても黒田総裁が辞めて何年か先だろう。

私がとくに問題だと思うのは、日銀のコミュニケーションの問題だ。なぜ物価2%目標を追求するのか、物価が上がることがなぜいいのかが国民にちゃんと伝わっていない。2%目標を達成するうえで欠けているのはそのコミュニケーションであり、そこを日銀は点検すべきだった。

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