米国の「高圧経済政策」は一種のギャンブルだ UBS証券の足立正道チーフエコノミストに聞く

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3月の金融政策決定会合で、黒田東彦総裁率いる日本銀行は「金融緩和の点検」を公表した(撮影:尾形文繁)
日本銀行やアメリカのFRB(連邦準備制度理事会)は3月に相次いで金融緩和方針を維持することを決めた。
日経平均株価は3月19日以降、4日連続で続落したが、アメリカの株価は高い水準にある。
日米の金融政策や株・為替市場の行方などについて、UBS証券でチーフエコノミストを務める足立正道氏に聞いた。

「点検」にサプライズはなかった

――日銀の「金融緩和の点検」をどう評価しますか。

大枠としては予想の範囲内だった。ETF買い入れで日経平均連動型を外してTOPIX連動型のみとしたことや、長期金利(10年国債金利)の変動幅をプラスマイナス0.25%にすることを「明確化」と表現したことにはやや意外感もあったが、全体的にサプライズはなかった。

大事なのは、今回の点検で何を学んだかだ。日銀は黒田東彦総裁が任期中の2023年4月までは今の政策を続けることを明確化した。副作用を考えて微調整はするが、2%の物価目標にしろ、(物価が2%をやや上回る水準で安定化するまで政策金利をゼロに据え置くという)オーバーシュート型コミットメントにしろ、イールドカーブ・コントロールにしろ、今の政策のフレームワークは正しいものであり、今後も継続していくことを確認したということだ。

――今回の修正で副作用を抑制する効果を十分に見込めますか。

ETF買い入れについては、過剰なリスクプレミアムを引き下げるという目的に対して、市場への過剰な介入を副作用と考えれば、買い入れを柔軟化したことやTOPIX型のみにしたことは適切であり、もっと早くやるべきだったと思う。ただ今後、日銀が買うのはリーマンショックのような異常な下落時だけなのか、1日2%程度の下げでも買うのかは見極める必要がある。

長期金利の変動幅については、2018年7月にそれまでのプラスマイナス0.1%から「倍程度」としたが、市場での変動が0.2%を超えることはなかった。今回、0.25%としたことの効果はゼロとは言わないが、あまり大きいとは思えない。

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