米国の「高圧経済政策」は一種のギャンブルだ UBS証券の足立正道チーフエコノミストに聞く

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――アメリカの景気回復が本格化し、FRBの金融政策が注目されています。

利上げについて、FRBはマーケットよりも慎重だ。パウエル議長ら主なメンバーは、サマーズ元財務長官が指摘するような1.9兆ドルの追加経済対策による過剰なインフレやスタグフレーションは起こらないとみている。私も、労働市場が今のようにタイトではない状況で、そこまでのインフレ加速の可能性は低いと思う。

今回のFOMC(連邦公開市場委員会)で予想されたように、2020年の反動やペントアップ需要などの一時的な要因で2021年10~12月期にインフレ率が前年同期比2.4%に上昇しても、2022年(の10~12月期)には2%に鈍化するとみている。そういう状況でゼロ金利政策をやめない方針だ。

量的緩和の縮小が懸念材料に

FRBは2021年10~12月期の実質経済成長率を同4.2%から6.5%へ大幅に上方修正したが、FOMCメンバー18人のうち2023年末までの利上げを予想したのは7人で、2020年12月の会合時から2人しか増えていない。これはFRBが平均インフレ目標を導入し、オーバーシュート型コミットメントをしているからだ。

一方で難しいのが、量的緩和(QE)の方だ。現在FRBは毎月国債を800億ドル、MBS(不動産担保証券)を400億ドル買っているが、この規模をいつ縮小するかというテーパリング(量的緩和の規模縮小)の議論が市場の懸念材料となっている。

FRBは2020年12月のFOMCで、物価安定と雇用最大化に「大きな一段の進展」があるまで今の買い入れ規模を維持するとしたが、表現はあいまいだ。アメリカではまだ一部でロックダウンが行われ、ワクチン接種(を受けた国民の割合)もまだ2割程度。経済再開は本格化しておらず、テーパリング開始の議論は時期尚早と考えている。

ただ、雇用者数が毎月急増して、みんなが(雇用進展の勢いが)強いと考えるようになれば、テーパリングの議論になる可能性がある。ポイントは、QE縮小はあっても政策金利引き上げのハードルは高いということだ。

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