子供の貧困が小学校教師を激しく疲弊させる訳

小学校は変わりゆく日本の矛盾の縮図である

社会の課題と矛盾が凝縮して教育現場に現れています(写真:mits/PIXTA)
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貧困が小学校教師の労働時間を増やしている――。

そんな事実があると知ったら、どう感じるだろうか。 「風が吹けば、桶屋……」のような話ではないかと思う人もいれば、「貧しい子どもたちが多いと、いろいろと教師の仕事も増えるので、さもありなん」と感じる人もいるだろう。

東京大学大学院の勝野正章教授(教育行政学)、都留文科大学の鶴田清司教授(教科教育学)、多摩大学の石島照代兼任講師(教員養成)らの共同研究グループは、就学援助率という指標を使って、子どもの貧困が小学校教員の労働時間を増加させることを統計的に明らかにした。

「就学援助」とは、学校教育法に定められている制度で、「経済的理由によって就学困難と認められる学齢児童生徒の保護者に対しては、市町村が必要な援助を与えなければならない」とされている。就学援助率は、地域の公立小中学校(中等教育学校の前期課程を含む)児童生徒数全体に占める、就学援助の対象となっている児童生徒数の割合である。

今回の調査の対象は小学校教員1396名、中学校教員642名、計2038名の正規採用教員。 同一県内に所在する小学校100校・中学校38校(実施県名は非公表)。対象エリア内の就学援助率は平均9.02%(レンジは0%~25%)。調査の偏りをなくす目的で、 就学援助率が全国平均(14.72%)以下のエリアを選んだ。

就学援助率1%増で労働時間が月1時間増

分析は、校種別(小学校・中学校)、生徒・児童在籍数(学校規模)別に行った。その結果、就学援助率は小学校教員の労働時間との間に高い有意差が見られ、就学援助率が1%増加すると、小学校教員の労働時間が週で15分(0.247時間)、月に1時間増加することを明らかとなった。週15分と聞くと思わず「それだけ」と言ってしまいそうだが、例えば就学援助率0%と、全国平均の約14.72%を比べると、後者の小学校に勤める教員のほうが、週約3時間40分も長く働くことになる。

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