子供の貧困が小学校教師を激しく疲弊させる訳 小学校は変わりゆく日本の矛盾の縮図である

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それだけに子どもの貧困と教師の労働強化の問題は、小学校の中だけで解決できるものではない。その点では「本調査も『子どもの貧困が教育に与える影響調査』」という大きなプロジェクトの一翼をなすもの」(勝野教授)だ。永原さんは「いちばんの対策は貧困を少しでも改善する行政の援助です」と指摘する。

そもそも学校とは何をするところで親や社会は何を期待するのか。おおよその新たなコンセンサスがなければ、問題は解決したという合意に達することすら難しいだろう。

親や社会が学校に大きな期待をしすぎないことが大事

異業種を経て、故郷の小学校の英語専任講師に転じた野田村結衣さん(仮名)は、こう話す。

「学校や教員にできることは限られていると思います。大事なのは、親を含む社会全体が学校教育現場に大きな期待をしすぎないことではないでしょうか。

現在は家庭でなされるべき教育の中身がどんどん学校内に浸食していて、低学年の教師など、教師なのか親なのかわからない仕事をしている方も多いように思います。

学校はあくまで勉強する場であり、しつけは家庭という考え方を社会全体で共有し、教員が本来の仕事である教材研究に費やせる時間を増やすことが大事です。教師のみなさんが教材研究に費やせる時間が増えると、授業がわかりやすくなり、授業がわかるようになると、子どもたちも荒れなくなります。学校や教師にできることは原則、授業をよくすることしかない、と個人的には思っています」

教師の経験はわずか1年だが、教育界以外で10年余り働いた経験があり、教育界に染まっていないぶん、問題の本質を突いている。

原 英次郎 ジャーナリスト

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はら えいじろう / Eijiro Hara

1956年生まれ、慶應義塾大学経済学部卒。81年東洋経済新報社入社。金融、エレクトロニクスなどの担当を経て、『会社四季報』『週刊東洋経済』編集長などを歴任し、2006年退社。その後、ダイヤモンド・オンライン編集長、プレジデントオンライン編集部 特別編集委員などを歴任。

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