子供の貧困が小学校教師を激しく疲弊させる訳 小学校は変わりゆく日本の矛盾の縮図である

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本調査をより詳しく知りたい方は、Thanks Caregivers Project(https://welcome.thanks-caregivers-project.jp/)を参照ください

一方、生徒・児童在籍数(学校規模)、中学校とは有意な差は見られなかった。中学校で有意差が見られなかった理由は、平均週7時間を超える放課後活動時間の影響によるもので、ほかの活動が有意な差として出てこなかったためだ(この調査は新型コロナウイルス流行前の2019年1月に実施された)。

夢だった教師になったけど来世は違う職業を選ぶ

この労働時間の違いは、どこから生じているのだろうか。

調査では「授業準備」「共同作業」「生徒指導」「保護者対応」など、教員の標準的な仕事については、統計的に有意な差は認められなかった。子どもの貧困と教員の労働時間に統計的に有意な差があったのは、「個人的な物品支援」(教師が自腹で文房具等を用意する)「家庭内の人間関係への相談に乗る」「経済的な問題の相談に乗る」といった項目である。

小学校教員は中学校教員と違って、「子どもの世話」をする時間が多いことが知られている。小学校の校長を務めたことのある永原睦美さん(仮名)が証言する。

「貧困家庭はひとり親の場合が多く。親は朝早くから働きに出る家庭がほとんどです。そのため親の目が届かず学校をさぼったり、不登校になったり。問題行動に走ったりする子どももいます。そうなれば、その家庭や子どもたちに対して、対応が必要になってきます」

貧困家庭が増えれば、こういう対応や時間が増えていくことになる。実際に、貧困が理由で朝食を食べてこない児童のために、週に1、2回校長室で朝食を出しているケースは枚挙にいとまがない。

近年、学校に対する親の期待も過大になってきており、こちらへの対応も強いられる。「教員になることは、幼い頃からの夢であり、現在教員として働いていることに後悔はしていませんが、来世、違う人生を歩むとしたら、きっと別の仕事をしていると思います。それぐらいハードな毎日を教員みんなが送っています」(小学校教諭の古沢隆介さん・仮名)と、悲鳴にも諦めにも似た声が上がっている。

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