3月21日で首都圏1都3県の緊急事態宣言は解除された。だが、宣言発令の原因となった医療体制の逼迫への不安は残されたままだ。年末年始の第3波では、新型コロナウイルス患者を受け入れる病床が不足し、入院先が決まらず自宅療養の患者が膨らんだ。特に入院が難しかったのが認知症の患者だ。
「あちこちに電話しても搬送先が決まらず、4時間待ってやっと決まった」
東京都大田区で認知症の在宅医療に長年携わる髙瀬義昌医師は、発熱した認知症患者の入院先を探すのに頭を悩ませていた。認知症の人はマスクを取ってしまったり、歩き回ったりすることがあるため、感染対策が特に難しい。コロナに対応でき、かつ認知症の対応に慣れている病院は限られる。そのため、認知症で感染が疑われる場合の入院は困難を極めた。
第3波で多発した介護施設のクラスター(集団感染)でも、感染した認知症の入居者を受け入れる病院がないため、施設に留め置かれることがあった。
後方支援の病院が足りない
全国の感染者が1日3000人を超えたピーク時と比べると、今は認知症の人の入院先が決まらないケースは減ってきたというが、「一度気を抜けばまた逆戻りする」と髙瀬医師は危惧する。
治療を終えた退院時にも、認知症の人には困難が待ち受けている。重症患者や高齢者はコロナの治療を終えても、リハビリテーションや経過観察が必要になる。第3波では、こうした患者を受け入れる後方支援病院が足りず、退院できないことが病床逼迫の原因の一つになった。
コロナで入院した認知症の人は、入院中に認知機能や身体機能が低下し、すぐに自宅に戻るのが難しいケースが多い。だが、リハビリ病院の多くは脳卒中などの手術後の回復を支援する病院ため、認知症に対応できる病院は全国でも限られている。コロナ治療に当たる病院関係者からは、退院後の受け入れ先がないため、認知症の人が病床を埋め続けていたという声が上がった。
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