コロナ禍で入退院も困難な「認知症」の過酷 自粛生活で認知機能低下、介護者のストレスも深刻

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「感染を心配するのはしかたがないが、外出しなくなることの弊害は大きい。歩く機会が減ると筋肉量が減り、高血圧や糖尿病などの生活習慣病が悪化しやすくなる。外でストレスを発散できず、孤立すればうつ状態にも陥る。これらは認知機能の低下につながることがある」

適切な感染対策を行っていても、感染リスクをゼロにはできない。実際、髙瀬医師が診療していたある男性は、在宅で家族の介護を受けながらデイサービスに通っていたが、今年2月に感染が発覚し入院した。その後、介護をしていた息子も陽性となったためホテル療養になり、そのさなかに男性は入院先で亡くなった。男性と息子は最期まで会えないままだった。

外出することによる感染リスクと、外出制限によって認知症が進行するリスクの両方がある。髙瀬医師は「痛しかゆしだ」と話す。

負担が雪だるま式に増える

介護スタッフや家族にかかる介護負担も、雪だるま式に増えていく。認知症の当事者とその家族の支援をする「認知症の人と家族の会」東京都支部には、このような相談があった。

夫とともに母親を介護している女性は、いつも手伝いに来ていた近隣に住む妹が、感染の不安から来られなくなった。さらにデイサービスで母親が濃厚接触者になり、検査の結果は陰性だったものの、デイサービスには通えなくなった。そうなると、いつもの介護の役割分担ができず、負担が一部の人にかかりやすい。

同支部が2020年7~8月に会員を対象に行ったアンケートによると、認知症の本人の生活や様子に変化があったと答えた人が7割に上った。アンケートには「家族もフラストレーションをため込んでいて、その矛先が認知症の人に向かいやすくなっている」、「人と話すことがなく孤独を感じる毎日」など、切実な声が上がった。

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