駒大・大八木監督「62歳」何ともエモい指導の神髄 「男だろ!」はスイッチを入れる記号にすぎない

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6年前の2015年といえば、2014年までの全日本連覇が途絶えた年です。箱根駅伝でも4区まで先頭に立ちながら、5区で青山学院大の神野大地選手が「新・山の神」と呼ばれる走りを見せて逆転、駒大は総合2位に終わった年でした。

そこからちょうど「青学時代」の到来となり、駒大は苦難の時期を迎えるわけですが、練習風景から覇気のなさを感じた時期とその戦績は、くしくも合致しています。

対話型へ舵をきった

「目線を落とした。昔は高いところから『ここまで登ってこい!』という感じでやっていた。部員もそれを意気に感じて、『なにくそ!』と思って頑張っていた。でも今はそうはいかない」と大八木監督本人が語ってくれました。

「大八木監督の存在は絶対だった」と語る駒大OBは少なくありません。そこには、監督の言葉に従順に従うこと=自分が強くなる早道だと信じ切れるという強固な絆がありました。しかしそういった関係性を作るのが難しくなってきているのも事実。従順に従っているように見えても、信じ切ってついてきているかどうかは微妙です。

大八木監督は選手の目線まで下りていって対話型に舵を切ることで、学生の自覚を促す指導にチューニングしていきました。また場合によっては、マネージャーに選手の反応を探ってもらうとのこと。自身の対話だけでなく、さまざまな角度から選手の個性を把握することで、個々の選手への接し方をアジャストしているのです。こうした変化からも、大八木監督がサーバントリーダーシップを取り入れるようになったのは明らかです。

しかし、練習自体の厳しさが変わったわけではありません。グラウンドでは相変わらず叱咤激励の声が響き渡ります。「練習で自分の本気度を示すことが大事。本気じゃないと子供たちに失礼」。信念自体は、まったくブレていないのです。

今年から、朝練の自転車伴走を再開したというのはもはや有名なエピソードですが、還暦を過ぎた自身の体調もあり、きちんと準備をして臨むために早朝サウナで体を温め練習に出ていくこともあるそうです。ここにも大八木監督の本気が表れています。

厳しい指導とのバランスをとっているのが、寮でのコミュニケーションでした。「なんで叱られたのか、わかってないときも多々あるでしょう。あるいは、さすがに言いすぎたと思うときもあります。そういうときは、寮に帰って監督部屋に呼んで話します」

なぜ怒ったのか、ココをわかってほしいというところを、冷静にロジカルに説明することで選手の納得と理解を深めるようになりました。

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